昨日もお伝えした令和9年度埼玉県公立入試の話。
 皆さんには、少しデータを見ながら、その全体像をつかんでもらおうと思う。

 まず、基本となる選抜のスタイルである。
 配点割合を変えて2回行われるが(第1次と第2次)、3つのパターンに分かれる。

1 1次、2次とも共通選抜
2 1次、2次とも特色選抜
3 1次は特色選抜、2次は共通選抜
 
1(1次、2次とも共通選抜)は92校
 62.2%
2(1次、2次とも特色選抜)は47校
 31.8% 
3 1次は特色選抜、2次は共通選抜
 6.1% 

 校数が実際の数より多いのは、ダブルカウントされている学校があるからだ。例えば大宮は、普通科は「1」で理数科は「2」なのでどちらの集計にも含まれている。

 共通選抜は、県が定める方法で得点を算出する。
 「学力検査は500点満点」
 「調査書は、(1:1:1)、(1:1:2)、(1:1:3)のいずれかを選び、これを200点満点・300点満点・400点満点のいずれかに換算」
 「面接は30点、60点のいずれか」
 という縛りのなかで各校が設計するので、学校の独自性があまり出せない。
 しかし、ふたを開けてみたら、3分の2近い学校が、1次、2次ともに共通選抜を採用することになった。
 
 特色選抜は、共通選抜に比べると学校の特色を出しやすい。
 「傾斜配点が可能」
 「調査書の学年比率を独自に決められる」
 「実技や特色検査(作文など)を入れられる」

 まず、これまでも実技を課していた学校(学科)は当然ながら特色選抜を採用した。
▼実技を実施する学校(継続)
 伊奈学園(スポーツ系・芸術系)
 大宮光陵(芸術系学科)
 大宮東(体育科)
 越生翔桜(美術表現科)
 ふじみ野(スポーツサイエンス科)
 松伏(音楽科)
 川口市立(スポーツ科学コース)
 芸術総合(全学科) 
 これらの学校は、実技を実施し、かつ、その得点割合が高いというだけで、それ以外は共通選抜とほとんど変わらない。

 次に、これまでも傾斜配点を行っていた専門学科は、引き続き行うこととし、特色選抜を採用した。
▼傾斜配点を行う学校(継続)
 大宮・理数科
 熊谷西・理数科
 所沢北・理数科
 松山・理数科
 川口市立・理数科
 大宮光陵・外国語コース
 春日部女子・外国語科
 越谷南・外国語科
 坂戸・外国語科
 南稜・外国語科
 和光国際・国際科(旧外国語科)
 春日部東・人文科

 さて、ここからが新たに傾斜配点を取り入れる学校で、これによって特色選抜を採用する形となった。
▼傾斜配点を行う学校(新規)
 浦和(数・英)
 浦和一女(数・英)※第2次のみ
 川越(国・数・英)※第2次のみ 
 川越女子(国・数・英)
 川越南(数・英)
 秩父・国際教養(英・国)
 所沢(数・英)
 大宮科学技術(数・英)

 浦和・浦和一女・川越など普通科上位校が傾斜配点を取り入れるのが、今回改革の注目点の一つと言えるだろう。
 再編でリスタートする大宮科学技術(旧大宮工業など)は、進学校宣言をしていることから上位校並みの傾斜配点を取り入れたが、これも注目点の一つ。

 次に。
 前述したとおり、共通選抜では面接は30点か60点というしばりがある。また、調査書の換算点も決められている。そこで、調査書や面接により大きな得点を配分したいと考えた学校も特色選抜を採用する形となった。

▼面接に大きな得点を配分した学校
 上尾・普通(2次120点)
 上尾・商業(2次240点)
 小川(1次90点 2次150点)
 春日部東(1次110点 2次275点)
 越谷南・普通(2次150点)
 深谷第一(2次120点)
 鷲宮(1次240点 2次300点)
 市立川越・国際経済(1次200点 2次300点)
 久喜北陽(1次120点 2次300点)
 滑川総合(1次90点 2次150点)

▼調査書に大きな得点を配分した学校
 大宮武蔵野(1次450点)
 桶川西(1次450点)
 川口東(1次500点)
 鴻巣・普通/商業(1次540点)
 坂戸西(1次600点)

 ここまで見てきたように、特色選抜を採用する理由(動機)は、「実技を課したい」、「傾斜配点をしたい」、「調査書をより重視したい」、「面接をより重視したい」などと考えられるが、理由がいまひとつ分かりにくい学校もある。
 春日部は、調査書の学年割合を従来通りの「1:2:4」とするためか。
 熊谷は、調査書の学年割合を従来通りの「2:2:5」とするためか。
 不動岡は、調査書の学年割合を従来通りの「1:2:3」とするためか。
 他に理由があるのかもしれないが、数字を見る限り、これ以外の理由が思いつかない。さすが過去の歴史を大事にする伝統校というほかはない。

 なお、昨日も触れたが、作文など特色検査を行う学校も自動的に特色選抜を採用することになる。
 新たに全員必須の面接が加わり、その分だけ受験生の負担は増えたわけだから、それに加えて特色検査を課す学校はあるまいと予想していたが、1校だけあった。三郷北が作文(小論文)を課す。今回は暫定版ということなので、もし可能なら最終版(決定版)では取り下げたほうがいいのではないかと思う。

 あともう一つ。
 特色選抜と共通選抜の併用型という学校もあるのだが、それは明日の話題としよう(疲れたから)。