中学1・2年生対象の学校説明会や進学イベントを、埼玉県高校入試シーンの常識にしたい。
 これが実現したら、自分の職業人生はほぼ終了でいいと思っている。
 それくらい、長年やり残してきた仕事だと考えているわけだ。

 私が描いているのは、こんな高校選びである。
 中学1・2年生のうちから高校について調べ、学校説明会や文化祭、進学イベントに足を運ぶ。そして中学3年生になったら、受験勉強に全力を注ぐ。
 もちろん、最終的な志望校決定は遅くてもいい。成績の伸び、模試の結果、倍率などを見ながら、最後まで迷うことはあるだろう。

 しかし、中3の夏休みになって初めて「そろそろ高校を考えるか」では遅い。
 中3になって学校説明会や個別相談に行くとしても、「以前聞いたが、もう一度確認しておこう」「最新の情報を聞いておこう」、私立なら、いわゆる「確約」を得るために相談へ行く。その程度でいい。

◆中3になったら受験勉強に全フリする
 そんなに早くから高校選びをしなくてもいいではないか。
 そういう意見は当然あるだろう。

 しかし、中高一貫校を目指す子供たちは、小学4年生、5年生ごろから学校を調べ、文化祭や説明会に出かけている。それを考えれば、中学1・2年生から高校を見始めることが、特別早いとは思わない。
 むしろ、中3になってから学校選びと受験勉強を同時並行で進めるより、仕事を分けたほうが合理的だ。
 中1・2では学校を知る。中3では合格する力をつける。
 この分業である。

 もちろん、実際に早い段階から動く中学生や保護者は、全体の15%から20%程度だろう。
 偏差値60以上が、おおむね上位16%と言われることとも不思議に数字が重なる。
 1学年を6万人と仮定すれば、15%で9000人、20%なら1万2000人。中1・2の2学年なら、その倍である。
 決して小さな市場ではない。

◆すでに「先行市場」は生まれている
 では、高校側はどうか。
 年明けの令和9年1月から3月に、中学1・2年生対象説明会を実施すると公表している学校は、すでにかなりある。
 浦和一女、大宮、小川、春日部、春日部女子、春日部東、川口北、川越女子、熊谷、熊谷女子、芸術総合、越谷北、進修館、杉戸、所沢北、飯能、不動岡、市立浦和、浦和南、大宮北。私立では大宮開成、埼玉栄、山村学園、山村国際などである。
 日程未公表でも、昨年度実施している学校(春日部共栄・花咲徳栄など)があり、継続する可能性は高い。

 高校募集を行う県内全日制は、公立131校、私立46校、合わせて177校。ざっくり180校と考えれば、すでに約2割の学校が年度替わり前の中1・2向け説明会市場に入っていることになる。
 ここに大きな意味を感じる。

◆「他がやっていないから、やる」学校 
 このブログで何度か取り上げてきたイノベーター理論で考えてみよう。
 新しいものに最も早く反応するイノベーターは2.5%。その次のアーリーアダプターが13.5%。合わせて16%である。
 先ほどの「約2割」という数字と、実によく重なる。

 中1・2対象説明会に早くから取り組む学校は、まさに「まだ他があまりやっていないから、先にやってみよう」と考える学校である。
 他校の成功を見てからではなく、自ら市場を作ろうとする。
 言ってみれば、埼玉県高校界のオピニオンリーダーであり、インフルエンサーである。
 私のように外から学校を見ている人間は、こういう学校と歩調を合わせる必要がある。

 そして、その次に来るのが、「他校に遅れたくない」と考える層である。
 ただ、この層には「とは言っても、まだ他校もそれほどやっていない」という心理も働く。
 ここが動き始めれば、一気にトレンドになる。
 おそらく、あと2、3年ではないか。

◆埼玉県全体で早期囲い込みを考える
 私は学校を煽りたいわけでも、受験生や保護者を焦らせたいわけでもない。
 ただし、マーケティングの立場から見れば、埼玉県は常に「東京」という巨大市場と向き合わなければならない。

 埼玉県の小中学生が、埼玉県の高校へ進学しなければならないというルールはどこにもない。
 都内には私立高校(大学付属など)も国立高校もある。交通の便によっては、県境を越えることなど何の障害にもならない。
 だからこそ、高校単位の募集だけでなく、「高校進学なら埼玉県内がいい」という意識を早い段階で育てておく必要がある。

 公立か私立かは、その後でいい。
 まず県内の高校に目を向けてもらう。
 中学1・2年生の段階で、できるだけ多くの学校を知ってもらう。
 そして中3になったら、学校探しではなく受験勉強に全フリする。
 そんな高校受験が当たり前になればいい。