学校の生徒募集を見ていると、どうしても苦戦している学校に目が向く。
定員割れしている。
説明会の申込が少ない。
希望調査の数字が伸びない。
出願者が減っている。
こうした学校は、課題が見えやすい。
だから「何とかしなければ」という危機感も生まれる。
だが、実はもう一つ重要なことがある。
うまくいっている時にしか解決できない課題がある。
今日はそんな話だ。
◆人気校にも課題はある
この2日間、埼玉県の進路希望調査を使い、第1回調査、つまり10月1日現在の希望者数を100として、志願先変更後の最終出願者数がどの程度になったかを指数化してみた。
これを便宜上、「志望推移指数」と呼んでいる。
たとえば指数100なら、10月時点と最終出願時点の人数が同じ。
70なら3割減。
110なら1割増ということになる。
今回は市立川越・普通科を見てみる。
直近7年間の指数は、新しい方から、「43、34、39、46、37、38、36」である。
かなり低い。
市立浦和の7年間平均が65台、川口市立が50台前半で推移していることを考えると、市立川越・普通科は非常に特徴的である。
令和8年度入試では、第1回希望調査で3倍前後の希望者を集めながら、最終出願時には1倍台前半まで下がった。
それでも十分な人気を保っている。
だから、表面だけ見れば問題はない。
むしろ「超人気校」である。
◆課題は「集めること」ではなく「残すこと」
市立川越・普通科は、10月時点で非常に多くの希望者を集める。
つまり認知度も高く、候補にも入りやすい。
問題はその後である。
最終出願までに、半数以上に相当する人数が減っていく年が続いている。
もちろん、これは同じ生徒を追跡した数字ではない。したがって「離脱率」と単純には言えない。
それでも、学校単位で見れば、「10月段階では強いが、最終志望としての固定度はそれほど高くない」という特徴は読み取れる。
ここに課題がある。
ただし、その課題は「もっと希望者を集めなければならない」というものではない。
すでに十分集めている。
だから次に考えるべきは、「どうすれば、10月までに集まった希望者に、その後も選び続けてもらえるか」である。
◆「市立川越だから行きたい」を作れるか
市立川越には強い学校ブランドがある。
長い歴史を持ち、地域での知名度も高い。
一方で、学校の歴史を振り返れば、前身は商業高校であり、現在も国際経済科、情報処理科という商業系学科を併設している。
普通科は、それらに比べれば歴史が新しい。
だからこそ、学校全体の人気とは別に、「市立川越・普通科だから行きたい」という理由を、どこまで明確に作れているかが重要になる。
学校名の人気、立地の良さ、校風への好感。
これらは入口として非常に強い。
しかし最終的に他校と比較された時に、「なぜ市立川越・普通科なのか」を本人が説明できなければ、志望は動く。
これは高校側にとってかなり重要なポイントだ。
◆女子人気は大きな強み、同時に分析すべき材料
市立川越・普通科のもう一つの特徴は女子人気である。
希望調査段階では、女子が7割から8割近くを占める年もある。
これは明らかな強みだ。
ただ、ここでも「女子に人気だから大丈夫」で終わらせてはいけない。
なぜ女子から選ばれているのか。
校風なのか。
立地なのか。
学校生活なのか。
進路なのか。
部活動なのか。
共学校でありながら女子が過ごしやすい環境なのか。
このあたりを学校自身が把握しているかどうかで、将来は変わる。
もし女子人気が意図的に築かれたブランドではなく、結果的にそうなっているだけなら、その人気は環境変化によって動く可能性がある。
逆に、人気の理由をきちんと把握し、再現可能な形にできれば、それは非常に強い資産になる。
◆少子化は「今の人気」を保証してくれない
今は希望者が非常に多い。
だから指数が40前後まで下がっても、最終的には一定の出願者数を確保できる。
だが、少子化がさらに進めばどうなるか。
10月時点の希望者母数そのものが減っていく。
その時に、今と同じ割合で希望者が減れば、当然ながら最終出願者数も減る。
つまり、今の人気は未来の保証にはならない。
むしろ今のうちに、「なぜ選ばれているのか」「なぜ途中で希望者が減るのか」「最後まで選ばれる理由は何か」を分析しておく必要がある。
◆苦しくなってからでは遅い
募集が厳しくなってから改革しようとしても、できることは限られる。
説明会を増やす。
SNSを始める。
パンフレットを変える。
新しいコースを作る。
もちろんこれらが必要な場合もある。
しかし、追い込まれてから行う改革は、どうしても短期的になる。
しかも学校内部では、「今までこれでやってきた」「なぜ急に変えるのか」という抵抗も起きる。
一方、うまくいっている時なら余裕がある。
実験もできる。
失敗もできる。
新しい企画も試せる。
何より、「今日の定員を埋めるため」ではなく、5年後、10年後のために動ける。
これが大きい。
◆人気校こそ、次の一手を
人気があることは、もちろん素晴らしい。
だが、その人気がなぜ生まれているのか。どの部分が本当の強みで、どの部分が時代や環境に支えられているだけなのか。そこを見極める必要がある。
市立川越のような人気校は、今すぐ困ることはない。
だからこそ今、考えられる。
どうすれば、さらに強いブランドにできるか。
どうすれば、少子化の中でも選ばれ続ける学校になれるか。
どうすれば、10月に集まった関心を最終志望まで育てられるか。
危機になってから改革するのでは遅い。
募集が苦しくなってからでは、どうしても守りの改革になる。
余裕がある時に攻める。
その意味で、うまくいっている時にしか解決できない課題がある。
これは人気校ほど、覚えておいていい言葉だろう。

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