今日は朝からオリンピック女子マラソン。どう考えてもアフリカ勢(特にケニア)には勝てんだろう。多少の期待を持てるとしたら一山麻緒選手。
 前田穂南選手は粘りはありそうだがスピードがない。鈴木亜由子選手は2時間28分台の記録しか持っていないので、トップ集団に加わることさえ無理。そう思いながら見た。

 で、結果はケニア勢がワンツーフィニッシュ。一山選手は辛うじて8位入賞。
 優勝タイムは2時間27分20秒。このタイムだと日本国内の主要大会でも優勝できない。
 だが、真夏の大会である。
 それに、オリンピックでは、選手はタイムより順位を重視する。つまり勝負に徹するので、こんなものだろう。

 一山選手の入賞(8位までが入賞)は日本女子マラソンでは4大会ぶりだという。
 アテネ五輪(2004年)で野口みずき選手が優勝、土佐礼子選手が5位、坂本直子選手が7位と全員入賞を果たして以来。
 しかし、今思えばあの頃の女子マラソンは凄かった。
 1992年バルセロナで有森裕子選手が銀メダル、1996年アトランタでは再び有森選手が銅メダル、2000年シドニーでは高橋尚子選手がついに金メダルと来て、野口選手だ。
 過去の記録が偉大なだけに、地元開催で8位が最高というのは残念だ。

 ただ、一山選手まだ24歳ということだからこれからだ。金メダルをとったのは野口選手は26歳、高橋選手は28歳の時だ。
 いろんな競技があるが、マラソンは10代が世界一になれる競技ではない。

 テレビ解説は増田明美さん。
 朝から細かすぎる選手情報がさく裂。
 競技に関係ない情報は要らないとか、うるさいという意見もあるようだ。
 私も自称市民ランナーなので、選手の趣味とか好きなタレントといったネタには興味がなく、もっと技術論を欲する方だが、テレビ解説はあれでいいとも思う。
 自分じゃ1ミリも走ったことがない人たちが、寝っ転がって見ているのだ。2時間以上、専門的な話をしまくっていたらチャンネルを変えられてしまう。賛否はあるが、増田さんはテレビ局の要望に応えているだけだ。ある意味プロ意識の高い人。

 増田さんが、「高地の涼しいところで練習しているエチオピアの選手は暑さに弱い」と言っていた。
 そうか。そう言えばそうだった。
 元社会科教員のクセにそのことをすっかり忘れていた。
 授業でエチオピア高原のことを教えたっけ。
 場所にもよるが標高2400m以上で、年間平均気温20℃から25℃。
 高地トレーニングには最適だが、暑さ対策にはならない。
 前の東京五輪(1964年)では、エチオピアのアベベ選手が優勝したが10月開催だったからね。

 アフリカの選手が全員暑さに強いというわけではない。
 そんな当たり前のことを、増田さんは思い出させてくれた。

 増田さんの解説によると、一山選手はとんでもない「鬼メニュー」をこなして今日の本番に臨んだという。
 後出しと思われるかもしれないが、その解説を聞いた瞬間、私は「ヤバッ!」と思った。
 これ、意外と失敗パターンなのだ。

 量をこなす練習は、「これだけやってきたんだから負けるわけない。行ける。出来る」という自信につながる、と、信じられている。

 もちろん本人も監督も事実上プロであるから、質も兼ね備えたトレーニングをしているに決まっている。
 自分を信じるとか何とか、そういう精神論で勝てるほど甘くないことは、われわれ素人が指摘するまでもない。
 が、その上で言えば、量を過信するのは危険だ。

 たとえば。
 10キロを3本走る練習と、10キロを1本走る練習とでは、どちらが効果的か。
 選手の実力にもよる。抱える課題にもよる。試合までの期間にもよる。
 が、そういうのをバッサリ切って考えると、どうなるか。

 1本なら全力を出し切ってもいい。もう次の練習はないのだから。
 だが、3本と決まっていると、1本目や2本目ではどうしても余力を残そうとする。
 気持ち的には1本目から全力なのだが、どこかで体力を割り振ってしまい、実は全力ではなくなってしまう。

 こういうのは日常生活でもよくあることだ。
 もちろん受験勉強でも。

 一発(一回)勝負の入試に強くなろうというのに、三回勝負を上手くこなす力をつけてどうする。
 そういう話にもなるわけである。
 反復や長時間を否定するものではないが、それに慣れてしまったり、それを過信するのは危険だ。