行きたい学校はあるが、受かっても勉強について行けるかどうか不安なので、受けるべきか変更すべきか迷っている。
 と、子供が言うんですが、どうしたものでしょう。
 これは受験生親からの相談。

 はい。答えはある意味ものすごく簡単。

 実は、あなたのお子さんの不安は、入学後、勉強について行けるかどうかではない。
 それも多少はあるかもしれないが、心の大半を占めているのは、落ちることへの不安である。

 であるから、入れば入ったで何とかなるさ、と、いくら説得しても効き目はない。

 私は高校の先生だったから言えるが、担任すれば、全員を進級させたいと思う。
 中退や進路変更はさせたくないと思う。
 いい大学に進学させたいと思うし、いい会社に就職させたいと思う。
 教え子という名の我が子なのだから当然じゃないか。
 黙って見てるはずないじゃないか。
 先生だけじゃなく、友達だって手を貸してくれるしな。

 というようなことを、どれだけ説明しても、不安が解消されることはない。
 そんな先の話じゃなく、真の不安は、その手前にある入試に対するものだからだ。

 学校が遠いので3年間体力が持つかどうか不安。
 これも同類。
 だったら、最初から候補に入れるなよ。
 今さら何を言う。

 さて、このような場合、どう対応すればいいか。

 とりあえず、子が口にしている不安(ついて行けるか、体力は持つかなど)はそのまま受け入れよう。
 オマエの本心はそこじゃないだろう。お父さんは(お母さん)はお見通しだ、などと言うと話がこじれる。
 それはあるかもしれないね、と、いったん受け取る。
 すぐに反論ないし説得に移るのは反発を招くやり方だ。

 その上で、何とかなるさ、そのうち慣れるさ、と行きたいところだが、ちょっと待った。
 なんか無責任に聞こえないか?
 ここは、お父さんも(お母さんも)全力応援するよ、と行かなければならない。

 勉強大変なら家庭教師つけてもいいぞ。
 たまには車で送り迎えしてやってもいいぞ。
 大事なのは、オマエが頑張れじゃなく、応援するよの気持ちを伝えることだ。
 で、この態度が次の本題への伏線となる。

 ところで、勉強の方はどうだ。
 思い通り進んでいるか。
 不安があるとしたらどこだ。
 という具合で、ゆるゆると本題に入って行く。

 ついて行けるか、体力はもつかの話はさっき終わった。
 何があっても全力応援するぞの気持ちも伝えておいた。
 面倒だが、そういう前段階を経ないと、問題解決のための話し合いにならないのだ。

 受験生が完全に不安から逃れるのは不可能である。
 むしろ、不安と向き合い、戦わなければならない。
 だが、一人で戦うにはまだ若く、経験があまりにも不足している。
 
 サポートが必要である。
 応援が必要である。
 が、私のような見ず知らずのジジイの応援メッセージなど、ほとんど役に立たない。
 そういうのを「屁の突っ張りにならない」と言う。
 家族や身内の応援ほど心強いものはない。

 周りが何と言おうとお父さんは(お母さんは)お前の決定を支持するぞ。
 お父さんは(お母さんは)、いかなる結果も受け入れる覚悟があるぞ。
 ということは、別に口に出して言わずとも良いが、そういう気持ちを持つことが肝要で、その上で、不安を少しでも軽減できるようサポートしてやれるといいね。