神奈川県教育委員会は、現在の中学2年生が対象となる2024年度(令和6年度)入試から、共通選抜における面接を廃止すると発表した。
現在の中学3年生が対象となる2023年度(令和5年度)入試では、従来通り面接は実施される。
神奈川県教委発表の元の資料はこちら↓
「神奈川県公立高等学校入学者選抜制度改善方針」(令和4年4月)
神奈川県公立入試における共通選抜というのは、共通と言うくらいであるから、学校・学科等を問わず、すべての受験生に共通に課せられる試験である。この中に学力検査と並んで面接があった。
すなわち、神奈川県公立入試では面接は必須(だった)。
公立入試で原則全員に面接を課す都道府県は、全国で3分の1かそれ以下だろう。
全員に面接を課す場合でも、その割合は比較的低いことが多いが、神奈川県の場合は、その比重が2割となっており、結構高かった。
今回面接が一律廃止になったことにより、共通選抜の要素は、いわゆる内申点と学力検査点のみとなり、相対的に学力検査の重みが増すことになるだろう。
なお、学校によっては、共通選抜に加え、特色選抜を課しているが、この中で面接を行うことは可能なようである。
◆埼玉県で面接を実施した学校(令和4年度入試)
専門高校・専門学科では面接を実施する学校が多いが、普通科ではそれほど多くない。
2022年度(令和4年度)入試で面接を課したのは、次の学校である。
第一次選抜における配点割合の高い順に並べた。
鳩山 500/1500=33.3%
小川 200/1200=16.7%
栗橋北彩 200/1225=16.3%
児玉・普通200/1225=16.3%
妻沼 150/1150=13.0%
白岡 100/940=10.6%
三郷 100/955=10.5%
蓮田松韻 100/975=10.3%
北本 100/1000=10.0%
鴻巣女子 100/1000=10.0%
日高・情 100/1000=10.0%
上尾橘 100/1080=9.3%
岩槻北陵 100/1080=9.3%
和光 100/1100=9.1%
飯能南・普100/1115=9.0%
八潮・普 100/1140=8.8%
鷲宮 100/1200=8.3%
川越初雁 80/1000=8.0%
松伏・普 100/1320=7.6%
鶴ヶ島清風50/960=5.6%
豊岡 50/885=5.6%
ふじみ野・普50/890=5.6%
市立川越 50/900=5.6%
八潮南 50/914=5.5%
桶川西 50/950=5.3%
新座 50/942=5.3%
三郷北 50/980=5.1%
川口青陵 50/1000=5.0%
草加西 50/1000=5.0%
狭山清陵 50/1050=4.8%
鳩ヶ谷 50/1050=4.8%
宮代 50/1045=4.8%
入間向陽 30/865=3.5%
志木 30/865=3.5%
飯能 30/875=3.4%
庄和 50/1540=3.2%
新座柳瀬 30/1030=2.9%
川口東 20/1020=2.0%
こうしてみると、神奈川県の2割(20%)というのは、かなり高い割合だったと分かる。
埼玉では、鳩山が突出しているが、それ以外に20%を超える学校はなく、15%以上が3校、10%以上が7校、5%以上が18校、5%未満が9校と、面接を実施するものの、それほど重視していないように見える。
むろん、全体に占める割合が数パーセントであったとしても、そこでの差が合否を分けることはある。ただ、上記38校中、太字で表記した23校は定員割れで全員合格であるから、結果としては面接で差が生じたとしても合否には関係なかった。
◆10分の面接で何が分かる
神奈川県の報告書に、このような記述がある。
「10 分程度で実施している面接において、生徒の意欲を測ることはできても、新学習指導要領で求められる日頃の学習に向かう姿勢(「学びに向かう力」)を適切に評価することは困難である」。
それ今になって言うかな。
10年ほど前に全員面接を導入する時点で、「10分程度で何が分かる。全員に課す必要があるのか」という反対論が出ていただろう。
でも、それを押し切って導入したから、簡単にはやめられない。
役人の常として、前任者の決定をそう易々とひっくり返すことはできないのだ。
そこで、「生徒の意欲は測ることはできても」と、当初の狙いは間違っていなかったと当時の決定者に配慮を見せつつ、その頃はまだ始まっていなかった新学習指導要領を持ち出し、状況が変わったからなのだと、あくまでも当初の主旨目的に間違いはなかったのだとさらにフォローする。まあ、苦心の作文といったところだ。
おそらく、一部の学校では運用により事実上の廃止に向かっていただろう。つまり、面接でほとんど差をつけないことにより、ここでの優劣が合否に響かないようにする。
◆埼玉で面接は生き残るか
私立の中には、コロナという特殊な状況下であったことから、面接を中止した学校があった。
で、これにより何か不都合があったか。
たぶん無いだろう。
私立は多くの学校が個別相談を盛んに実施している。
10分かそこらの面接試験よりも、もっと濃い面接を行っているのだ。
だったら、ほぼ形式に過ぎない面接に時間を使うのは、学校側、受験生側双方にとって無駄だ。
唯一不安なのは、個別相談抜きでいきなり受験してくる子たちだろう。むろん、これを排除することはできないし、選抜において差別することもできない。
点数が基準に達していれば合格なのだが、会ったことがないからどんな子だか分からない。不安と言ってもその程度のことだ。
どうしても不安なら、特定の学科・コース(クラス)だけは面接を残すという方法もある。
公立の場合は、選抜方法をいじくり回すより、競争状態を実現するのが先決だろう。
面接実施校には定員割れ校が多いわけだが、では面接を廃止すれば志願者が増えるのか。
たぶん、増えない。
むしろ、内申点悪くても、学力検査で点が取れなくても、面接でカバーできるとしておいたほうがアピールになる可能性だってある。
志願者数や倍率を見て、ちょこちょこ基準を変えたりするのは良くないクセだ。それで何かを改革したような気分になってはいけない。
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