教育や学校をめぐる問題では、教員不足が最近のキーワードになっているようだ。
ひと頃騒がれた中学校の部活問題は、徐々に民間に移して行く方向が明らかになり、これからは学校の問題ではなくなる。
では、次に何を取り上げ、問題化して行くか。
マスコミはそれを探っているところだ。
マスコミにとって学校は常に問題をかかえているところでなくてはならない。
(確かに問題が多いのは事実だが)
もちろん学校に限らず、政治の世界も、企業の世界も問題だらけだ。
そして、それらがマスコミにとって、いわば飯のタネになるから、大歓迎である。
特に学校は、いくら叩いても反撃される恐れがないので戦いやすい相手だ。
政治や企業は、下手に叩くと報復を受けるので慎重に戦いを進める必要がある。
そういうわけなので、学校関係者の皆さん、学校は常に標的にされ続けるのである。
◆不足は一部で起きている現象
先月(4月)のことだが、文部科学省は、各地で厳しい「教員不足」の状況が発生しているとして、教員免許がない社会人を採用できる制度を積極的に活用するよう全国に緊急通知した。
昨年度初めて行った全国調査では、4月の始業日の時点で公立の小中高など合わせて2558人の教員不足が明らかになった。
こうした状況が今年度も続いているとして、全国の教育委員会に緊急通知したのである。
全国にはざっと1万の中学校、2万の小学校がある。
教員不足が日本全国いたるところで発生していれば、不足数は何万人というレベルになるはずだ。
しかし、せいぜい2000人台である。
この数を見る限り、充足しているケースの方が圧倒的に多く、不足しているのは一部であろうと推測できる。
むろん一部であっても無視していいはずはないが、事態を冷静に眺める必要がある。
◆採用や人員配置は自治体の仕事
公立小中学校の教員は、全国各地の自治体に雇用されている地方公務員である。
したがって採用や人員配置の権限、責任は地方自治体にある。
つまり、文部科学省はノータッチ。
(ただし、教員人件費の一定割合は国が負担している)
だから教員不足が起きている責任は、第一義的には地方自治体にある。
このあたりをごっちゃにして、何でもかんでも文部科学省のせいにしても、この問題は解決しない。
◆臨採要員が確保しづらい
正規教員の数は法律で定められており、ここでは過不足は生じていない。
最近は人気が低下しているとはいえ、教員採用で定員割れが生じているという状況ではない。
不足が生じさせている主たる原因は、臨時的任用教員などの講師の確保ができないことだろう。
産休・育休代替、病休代替などは、期間を区切った臨時採用でまかなうわけだが、そのストックが少ない。
このあたりは、教員希望者減少の弊害だろう。
希望者が多い時代は、採用試験不合格者を臨採要員としてプールしておくことができた。
だが、倍率の低い今は、ほどんどが合格し正式採用されてしまうので、いざという時のための余剰人員を確保しておくことができない。
不足を簡単には解消できない原因の一つがこういうところにもある。
◆なぜ教員の働き方改革だけが注目されるのか
教員の働き方改革は進んだ方がいい。
まずはこれが基本的立場。
その上で。
教員の働き方改革は、一連の改革の中で残された最後の課題なのか。
または、この改革抜きに、働く人全体の改革は進展しないのか。
いつも疑問に思うのはこの点だ。
教員の働き方に世間の耳目が集まれば、他への注目、関心が薄まる。
よく言われる「教員の知らない一般社会」の働き方改革はどうなっているのか。
そんなに進んでいるのか。
だったら学校も、教員も一刻も早くそれに合わせよう。
教員だけが取り残されていい道理はない。
だが、私の目にはそのようには見えない。
「教員の知らない一般社会」の改革は決して進んでいるとは言えない。
そこから目をそらすために、ことさら教員の働き方に世間の目を誘導しているのではないか。
まあ結果として、教員の働き方改革が進むのは悪くはない。
どんどん進めてほしいが、その陰でしめしめとほくそ笑んでいる経営者がごまんといそうである。
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