個別相談がらみをもう一つ。今回は学校の先生向けの話である。「私、個別相談あまり得意じゃないんです」という先生がいるようなので、そういう先生へのアドバイスだ。

 まず、得意とか不得意とか、そういう発想を止めなさい。
 うまく説明して、相手にその気になってもらうのが苦手と思っているようだが、営業マンではないし、ましてや詐欺師ではないのだからね。口下手で結構。

 要するに、説得の場ではないということですよ。
 人間誰しも説得されるのは嫌いなんだから、説得は逆効果だ

 伝えるのは情熱
 あなたの生徒愛、学校愛、それをあなた自身の言葉で語ることだ。
 もちろん、受験生や保護者からの疑問・質問には、事実と数字を基にきっちり説明しなければならない。しかし、基になる事実や数字は一つだから、これは誰がやっても同じ。違いは熱量の差だ。

 あなた自身の言葉
 私が大事にしているのはここのところだ。それぞれの先生が、異なる年齢、キャリアを持っている。個性が違う、性格が異なる。
 たとえば私のような高齢者が、「うちの学校はまだそれほど実績もないし、伝統もないけど、キミもこの学校に入って、ボクと一緒に歴史を作ろうよ」と熱く語っても、頭おかしいんじゃないかこの爺さんってなるのがオチだ。そろそろ死にそうなんだからね。でも、若い人ならこれが言える。
 
 あなたの熱い思いは、あなたの言葉にしか乗らない
 他人の言葉はダメですよ。借り物はいけません。どこか不自然になる。真実性に乏しく相手の心に響かない。

 上手く説明してやったぜ
 私は先生ではなく商売人なので、ついつい技巧に走るわけだが、個別相談の場に技巧は要らない。技巧は授業で発揮しなさい。情熱だけで授業されたんじゃ生徒は迷惑だからね。

 受験生・保護者は決めに来ている
 ショッピングで言えば、ただの冷やかしやウィンドショッピングではなく、お金を用意して、今日ここで買ってしまおうと思って来ている。特に今の時期は。
 お客さんは無意識のうちにポンと背中を押してもらいたがっているわけだ。だからこちらの想定基準を満たしているんだったら、背中を押して上げるか腕をグイと引っ張ってあげるのが親切というものだ。それを、あまり強引なのは好感度下がるんじゃないかと変に遠慮して、「ぜひ考えてみて下さい」みたいな、一歩引いた言い方をすると、「これはきっとダメなんだ」と思われてしまうかもしれない。

 われわれ商売人の世界では、クロージングというのをものすごく重視しているわけだ。会談の終わり方だね。
 もし私が募集の責任者だったら、話の入り方はご自由に、途中経過もご自由に、ただクロージングはこのようにしましょうねと先生方にお願いするだろうね。個別相談に技巧があるとすれば、唯一この場面だ。