皆さん、先生を目指すんだったら今がチャンスだよ。このネタ、書こうと思ったはずだが忘れていた。最近、こういうことがよくある。
 埼玉県が6月18日、「埼玉県公立学校教員採用選考試験の志願者数・志願倍率」を発表した。

 県教育局が志願者数を公表している2017年度以降、採用試験の志願者数は小中高すべてで減少を続けているそうだ。だから、今がチャンス。これからはもっとチャンス。
 ◆倍率
 小学校 2.8倍(前年と同じ)
 中学校 4.8倍(前年5.7倍)
 高校  8.0倍(前年7.4倍)

 ◆採用見込み数
 小学校 720人
 中学校 430人
 高校  200人

 志願者数が減っているのに倍率にさほど変化がないのは採用数が減っているからだろう。

 その昔、私が採用試験を受けたころは、オイルショックの後で民間企業の採用が少なかったから、その分、公務員人気が高かった。
 それに、今のように世間からブラックだとも言われていなかった。
 志願者は多かったが、ちょうど生徒急増期にぶつかり、新設校がバンバン作られていた時代だから採用人数は多かった。そういう意味ではあの頃もチャンスだったのかもしれない。
 
 ◆何てったって公務員はクビにならんから
 安定性は抜群だと思うよ。コロナの影響で大変な時だけど、先生で来月の給料もらえるかどうか心配している人はいないよね。もうじき潰れるんじゃないかとか、リストラされるんじゃないかと怯えている人もいない。ゼロとは断言しないが、ほぼいない。
 そこへ行くと民間は厳しいよ。特に中小企業はコロナの影響まともに受けて、今月も来月も給料なしかよ、みたいな人が大勢いる。かく言う私もその一人だ。
 生活の安定を求めるなら公務員一択。

 ◆給料まずまず、福利厚生も民間以上
 給料はまずまずだ。まあ、普通に生活する分には困窮するということはない。昨日、仕事の関係で某公立高校に一日中いたが、駐車場にはいい車ばっかりだよ。外車はあっても軽自動車は見当たらない。
 ベースアップは人事院勧告によるが、人事院が参考にしているのは大企業の給与であって中小企業のそれではない。
 働いているやつも、そうじゃないやつも給料同じ、っていうのが気に入らんが、他人のことはどうでもいい。
 有給休暇は年20日もらえて、最高20日まで翌年繰り越しできる。私は年度初めは常に40日からのスタートだったね。
 まあ実際のところ、有給なんて取れないという問題点はあるわけだけどね。
 産前産後休暇があって、1年間の育児休暇も取れる。これはしっかり取っている人が多い。

 ◆上からの命令も絶対的なものではない
 自分の上に管理職がいて、その上に教育委員会があって、さらに文部科学省があってと、一応指揮命令系統はあるわけだが、企業に比べたらユルユルだ。やりたいことができる。
 若僧でも上司にモノが言える。職員会議で発言できる。これって、民間企業だとほぼ無理。

 ◆転勤がない
 人事異動はあるが、所詮県内とか市内でしょう。一家で転居しなければならないとか、単身赴任しなければならないという状況は起こらない。

 ◆すぐに第一線に出られる
 企業ではやりたいことがあって入社しても、その仕事に就けるかどうか分からない。10年以上かかる場合もある。
 その点、先生はすぐにやりたいこと、つまり授業や担任なんだけど、それが出来る。
 それが苦痛という場合もあるが、子供たちと関わりたくて先生になったのに、そういう仕事が与えられないということはない。

 ◆長時間労働は事実だ
 いま世間で一番問題になっているのはここだろう。
 私は体力があったせいか長時間労働は苦にならなかった。部活の顧問をやっていると休日なしになるのも本当だが、これも苦痛ということはなかった。
 だから、長時間勤務(しかも残業代なし)や部活顧問(手当つかず代休取れず)が「それ、無理!」という人にはお勧めできない仕事だ。
 
 あと、会議もやたら多いぞ。
 それと、昔なら、そんなのは学校の仕事じゃないと言い切れたことが、どんどん校内に入り込んで来ていて、これらも長時間労働に輪をかけている。
 昔からいじめや不登校や、セクハラやパワハラや、モンスターペアレンツも実態としてはあったと思うが、「〇〇問題」として語られることはなかった。
 そのあたりが、先生という職業の魅力を削いでいる面もあるだろう。
 
 ◆先生にしか手にできないもの
 私は先生という仕事をやめて何十年も経つが、年を取ってから嬉しい贈り物があるよ。
 若い人にはまだ分からないと思うが、「教え子」という一生の宝物が手に入るんだ。
 むろん、すべての「教え子」が私を慕ってくれているはずはなく、あいつの顔なんて二度と見たくないとか、思い出したくもないとか、あいつのおかげで人生狂わされたと思っている生徒だって大勢いるわけだが、いつまでも忘れずにいてくれる「教え子」というのはいいもんだよ。
 在学中の成長も嬉しいが、大人になりさらに成長した姿を見るのはそれ以上に嬉しいものだ。
 あえて言えば、これが長時間労働と引き換えに得たものかな。

 時代も変わったのだから、先生の働き方も変わって当然だ。
 自身の体験を押し付ける気もない。
 が、何十年と生き、いろんな職業を経験して、その中で、先生という仕事は「やりがい」という点では一番だったと思っている。