入学者のうち何人がその高校を卒業したか、裏を返せば卒業しなかったか。これを毎年調べているが、今年はコロナの影響もあり県教委からの各種統計データの発表が遅れている。
 よって今回は中間発表ないしは推定値ということになる。

◆非卒卒業率は5~6%
 今春(令和2年)の埼玉県の高校卒業者数(全日制)は、
 公立 37.242人
 私立 18.224人
 全体 55.466人

 この世代の生徒は2017年(平成29年)4月に高校に入学している。
 その時の人数(全日制)は、
 公立 39.671人
 私立 18.959人
 全体 58.630人

 引き算すると、
 公立 39.671-37.242=2.429人
 私立 18.959-18.224=735人
 全体 58.630-55.466=3.164人
 これが入った学校をそのまま卒業しなかった人数だ。中退なのか進路変更なのかは分からない。また、一家転住などによる転校による増減もあると思われるが、その詳細も不明だ。
 が、一般的には「やめた生徒」の人数と見て、いいだろう。これはできるだけ少ない方がいいが、進路を変えたほうがその子のためという場合もある。
 その上で、入学者に対する「やめた生徒」の割合(以下、非卒業率という)を見てみよう。

 公立 6.12%
 私立 3.88%
 全体 5.40%

 埼玉県公私立全日制の場合、5~6%の生徒が、入った学校をそのまま卒業していない。

 私立の卒業生データが全部集めきれていないので、今日は公立だけを見て行くが、平均が5~6%であるから、10%を超えるとちょっと多すぎる、20%を超えるとかなり多すぎる、30%を超えるととんでもなく多すぎるという感じになる。

 30%超  1校
 20%超 10校(うち3校専門学科校)
 10%超 29校(うち10校専門高校、3校総合学科校)

 30%超は上尾橘、20%超は岩槻北陵、蓮田松韻、新座、妻沼、川口工業、羽生実業など。
 専門学科では工業系の非卒業率が高い。

◆進路変更に寛容な時代
 私が教員だった頃は、やめた後の受け皿が少なかった。だから、何としても引き止め、卒業させようと努めた。しかし、今は通信制はじめ多様な進路が用意されている。世の中全体も昔ほど進路変更に否定的ではない。
 とは言え、やはり入った学校をそのまま卒業するのが一つの理想形ではあるわけだから、「嫌なら途中でやめればいい」という指導はできない。

◆残った生徒は強い
 非卒業率が高い学校の印象は良くない。しかし、実際に行ってみると、落ち着いた雰囲気で、生徒たちも明るく真面目に勉強や実習に取り組んでいる。
 このことは以前にも書いたと思うが、周りが脱落して行く中で、流されず、夢や目標を失わず学校生活を続けている子たちは強いのだ。

◆募集で解消できるか
 昨日、ほとんどの課題は募集で解消できると書いたが、非卒業率が高いという課題を募集によって解決できるか。
 たぶん、できる。

 非卒業率の高い学校と、定員割れしている学校はほぼ一致する。
 倍率が高まれば、学力的について来られない生徒が入って来ない。学校生活への意欲に欠ける生徒も入って来ない。
 非卒業率が高いのはその学校の教育内容や方法、あるいは先生たちの資質能力に問題があるのではなく、途中でやめる要素を持った生徒が入ってくるという理由が大きい。
 合格したものの、入学説明会にも入学式にも来ない子だっているのだ。

 私は、いわゆる指導困難校での勤務経験はないわけだが、少しでも非卒業率を低くしようと思ったら、目の前の生徒をちゃんと卒業させるための努力は当然として、一人でも多くの受験生を集めることに全力を傾けるだろう。
 なにかと難しい学校に勤務されている先生方、引き続き頑張っていただきたい。