みんな努力が大好きだ。私は自分では嫌いだが、人に言うのは大好きで、弱点は努力で克服せよとうるさく言う。
 しかし実を言うと、弱点というものは、その才能を持ち合わせていないのであるから、努力といったよく分かんない精神的なもので苦服などできないのである。

 だから弱点は諦める。
 もし、どうしても努力がしたいのなら、それは得意に向けたほうがいい。

 たしかに苦手や弱点がいつの間にか得意になることもある。
 私は小さい頃体育が苦手で、運動会の前などは常に雨ごいをして中止を願っていたものだ。
 それが中学3年生あたりから急にいろんなことが出来るようになり、高校では3年間部活を続け、教員になってからは部活顧問をやり、70歳目前の今もランニングや山登りをしている。
 普通、こういう人間のことは運動が苦手とは言わない。

 では、こうなったのは努力の結果か?
 いや、全然努力なんてしてないよ。
 逃げることばかり考えていた。
 ただ偶然にそうなっただけだ。
 もし努力をしたと言うなら、出来るようになってからの話だ。

 努力で弱点を克服しようと考えれば、それが実現できなかった場合、努力不足ということになる。
 下手したら、努力が出来ないダメ人間の烙印を押される。

 だからさ、そうじゃないんだよ。
 簡単に言えば向いてないんだ。適性がなくて、才能がないんだよ。
 努力で克服なんて出来っこない。

 音楽や美術が苦手なら、そういう仕事に就かなければいいわけだし、英語や数学が苦手なら、それを必要としない職業を選べばいい。
 みんなそうやって生きてるんじゃないの。

 まあ人生何があるか分からないから、苦手なことが自分に回ってくることもある。
 その場合は、どうしたら苦手から逃れられるかをまず考える。
 自分が出来ないことは人に任す。
 自分は苦手でも、それが得意という人は世の中いくらでもいるから、そういう人を頼る。
 これが究極の苦手克服法だ。

 で、最後はこのブログらしく、受験勉強の話に持って行くわけだが、残り数週間となった時点で、苦手に取り組んでどうする。
 どうしても弱点を努力で克服しないと気が済まないというなら、高校生になってからゆっくりやればいい。
 大学生になっても、社会人になっても、ずっとずっと苦手の克服を生きがいに人生を送ればいい。

 でも、努力というものに価値を見出しているのなら、その努力を得意に向けてみたらどうだ。
 きっと、いや絶対に結果が出る。
 苦手であと5点、10点を積み増すのは至難だが、好きや得意だったら十分出来る。
 どうせ入試は合計点だけの勝負だ。
 何が得意で何が苦手かなんて誰も見てない。
 気にしているのは自分だけだ。

 もうここまで来たら、弱点は弱点のまま本番に臨め。
 その代わり、好きや得意にはギリギリまで努力を惜しむな。
 そして、努力の結果見事合格。

 努力は苦手のためだけにあるんじゃない。
 好きや得意に向けたって、努力は努力だ。
 さあ、どっちを選ぶ。