マスクを着用すると、顔を構成する三大パーツである目、鼻、口のうち二つが隠れる。
 これでサングラスでもかければ顔全体が隠れて、誰が誰やら。

 若い人や女性のことは分からんが、年寄り的には、ほうれい線が隠れて、ちょっとは若く見えるという利点がある。
 シミも隠れる。
 たるんだ顎も隠れる。

 私は笑うのが嫌いだ。
 笑わせるのは嫌いじゃない。
 笑られることはある。
 でも、人前であまり笑わない。

 目と口とではどちらが喜怒哀楽をよく表すか。
 専門家ではない私には正確なところは分からないが、「目が笑っていない」という言い方もあるように、笑いを担当しているのは主に口であろう。
 口が隠れていると笑っているのかどうかが判然としない。
 だからマスク着用で口の動きが見えない状況は、笑わない私には好都合なのだ。
 マスク生活も悪くない。

 ただランニング中のマスクは辛い。
 瞬間すれ違ったくらいでは感染しないとは思うが、ノーマスクでのランは「白い目」で見られる。
 マスクをしていても相手の目の色だけは分かるのだ。
 なので、人とすれ違わない早朝を選んで走る。
 それが無理なときは、あごマスク状態にして、人とすれ違ったり、追い越したりするときだけ、ちょいと鼻の上まで引き上げる。
 これは面倒だ。

 長引くコロナ禍で、マスクは服装の一部になった。
 去年の夏ごろは、外に出てから「いかん。マスク忘れた」というのが幾度となくあった。
 だが、さすがにそれはなくなった。
 マスクが衣服の一つになった証拠だ。

 そうなると、今度は「マスクを外せ」と言いづらくなる。
 なにせ衣服の一部であるから、ズボン脱げとかパンツ脱げと言っているのと同じことになるからだ。
 「マスク外していいですよ」などと言おうものなら、マスク着用を否定されたと受け取られかねない。
 
 早くコロナ騒ぎが落ち着いて欲しいが、みんなが喜んでマスクを外すかというと案外そうはならず、新たなマスク問題が浮上しそうな気がする。