倍率だけでは分かりにくいことがある。
 倍率が低かったり下がったり、また定員を割ったりすると「人気が下がったんじゃないか」。
 そんな見られ方もする。

 ある面当たっているとは思うが、そうそう単純なものではない。
 例えば、募集人員の増減なども倍率を変動させる要因だ。

 そこで本日は、令和4年度埼玉県公立入試において、募集人員を増やした学校の動向について見てみる。
 募集人員を増やした学校は18校あるが、それを跳ねのけて倍率を上げた学校もあれば、その影響をもろに受け志願者数は増やしたものの倍率を下げてしまった学校もある。

 では、募集の規模別に見て行く。
 なお、転編入枠を設けている関係で、360人募集であれば入試での募集人員は358人、320人であれば318人といった形で、倍率計算の基礎となる数字はやや小さくなっている。
 倍率は左側が昨年同期、右側が今年である。

◆320人→360人
朝霞    1.20→0.98↓
朝霞西   1.23→1.13
浦和北   1.05→1.11
川口    1.14→1.16
川越西   1.01→0.97↓
越ヶ谷   1.36→1.37
所沢西   1.08→1.10
不動岡   1.32→1.23

 東部地区で安定した人気を誇る越ヶ谷は、さすがにこの人数でも倍率を下げることはなかった。志願者数は(432人→490人)と58人増加した。
 計算上、320人募集で1.12~1.13倍以上であった場合、志願者数が同じであれば、360人募集となっても定員を割ることはない。朝霞、朝霞西、川口がそれに該当していたが、朝霞は志願者が(382人→352人)と30人減少したため定員割れとなった。朝霞西は倍率を下げたが、川口は僅かだが上げた。
 浦和北、川越西、所沢西は志願者数が前年並みだった場合、定員割れする恐れがあったが、浦和北所沢西は大きく志願者数を増やし前年より倍率を上げた。特に浦和北は、志願者を(335人→398人)と64人も増やしている。川越西は志願者を(321人→347人)と26人増やしたが、定員割れとなった。
 不動岡は、外国語科を普通科に転換したため40人増となった。前年の総志願者数は478人(普通科421人、外国語科57人)だったが、今回普通科のみで441人と37人減少したため、倍率もやや下がった。

◆280人→320人
桶川    0.90→1.00

 桶川は280人募集でも定員割れしていたので320人募集は苦しいかと見られたが、志願者数を(250人→318人)と68人も増やし、ぎりぎりだが1.00倍をクリアした。

◆240人→280人
大宮東   0.94→0.88↓
春日部女子 1.20→1.01
熊谷西   1.12→1.13
志木    1.22→1.08
草加南   1.02→1.09

 春日部女子志木は、前年志願者がそれぞれ285人、291人だったので、大きな減少さえなければ280人募集でも耐えられる見通しだった。結果、それほど大きな変動はなく、何とか1.00倍台を維持した。
 熊谷西草加南は、志願者が前年並みだと定員割れするところだったが、熊谷西は(267人→313人)、草加南は(242人→302人)と、共に大きく志願者を増やし、倍率も上昇した。
 大宮東は240人募集でも定員割れだったので、荷が重かった。ただ、志願者は(223人→244人)とやや増やしている。

◆200人→240人
上尾鷹の台 1.14→1.05
富士見   1.00→0.96↓

 富士見は200人募集でもギリギリだったので厳しかった。ただ、志願者数は(198人→228人)とやや増やしている。
 上尾鷹の台も240人募集はやや苦しいと見られたが、志願者を(225人→251人)と増やし、1.00倍台にとどまった。

◆160人→200人
庄和    0.96→0.90↓

 160人募集でも定員割れだった庄和にとって200人募集は重かった。志願者は(152人→178人)と増やしており、前年と同じ160人募集であれば定員割れはさけられた計算となる。

◆760人→800人
伊奈学園  1.24→1.19

 伊奈学園は前年の志願者が834人であり、それを大きく下回らない限り、定員割れはないと見られていた。結果、志願者はやや増の852人となり、大きな倍率の落ち込みはなかった。

◆まとめ
募集人員を40人増やした18校のうち7校は前年の倍率を上回った。
桶川  +0.10ポイント
草加南 +0.07ポイント
浦和北 +0.06ポイント
川口  +0.02ポイント
所沢西 +0.02ポイント
越ヶ谷 +0.01ポイント
熊谷西 +0.01ポイント

 越ヶ谷を除けば、特に高倍率とは言えないが、川口は全県普通科平均1.14を上回っている。
 浦和北も大きく倍率を上げ最大サイズの360人募集をクリアした。
 草加南は外国語科の定員割れをカバーしそうだ。
 桶川は定員割れ状態からよく盛り返した。
 また、倍率こそ下げたが志願者数は増加している学校も多い。

 以上、少し異なる視点から倍率動向を見てみた。