受験生や保護者の中には、諸般の事情でどうしても公立じゃなければという方もおられるだろう。
 そういう方にとって一番の安全策は、倍率1.00未満の学校、すなわち定員割れ校に志願することである。
 昨年の埼玉県公立入試において、定員割れにも関わらず志願者数(当日受検者)より合格者数が(入学許可候補者数)少なかった例が普通科で2件(2校各1人)あった。
 どんな事情があったかは不明だが、レアケースである。
 基本は全員合格だ。

 次善の策は、できるだけ低倍率の学校に志願することである。
 倍率が1.01~1.05程度だと不合格者が1ケタという学校もある。
 不合格者が200人以上出てしまう学校もある中で、これは超安全策と言っていいくらいだ。

 そして三番目の策は、欠員募集に志願することである。
 予定した募集人数を1人でも欠けば、欠員募集が行われる。
 昨年も普通科だけで25校程度が欠員募集を行った。
 欠員募集を実施するかどうかは、募集人員も含めて合格発表の日に発表される。
 (日程や方法は学校により異なる)

◆定員割れの学校は進路変更も多い
 一般論として言えば、定員割れを起こしている学校は、途中で進路変更する生徒も多い。
 昨年の松山、松山女子のような「まさかの定員割れ」もあるが、だいたいメンバーはいつも同じだ。

 途中で進路変更する生徒は通信制など別の学校に移るケースも多い。
 そこで生きる道を発見できるのなら、それはそれでいいのだが、せっかく入ったのに残念なことだ。

 途中で辞めてしまう生徒は、元々学習に対する意欲が少ない、基礎的学力が不足しているなどの理由で高校生活に馴染めない。
 経済面など家庭の問題もあるだろう。
 そういう生徒に対し、学校も先生も出来る限りの努力はするのだが、食い止めることができない。
 稀に入学者説明会や入学式にすら来ない生徒もいて、こうなると学校としてもお手上げだ。
 もちろん、そのまま放っておくような真似はしないが、先生方の努力はほぼ徒労に終わる。

 入ってくる生徒が少ないところに、辞めて行く生徒も多い。
 これでは部活も成立しないし、行事も盛り上がらない。進学実績など別世界の話だ。
 人気の出る材料がない。
 かくして負のスパイラルは加速する一方なのである。

◆生き残りの生徒はたくましいぞ
 理数科や外国語科を別枠とすれば、専門高校や専門学科を持つ学校が約50校ある(総合学科含む)。
 この中で私が実際に足を踏み入れたことのない学校は、数えてみたら5校だった。
 9割の学校には取材その他で訪問している。
 授業を見に行ったり、部活や行事を見に行ったり。
 まあ取材して記事を書くのが仕事だから、当然と言えば当然だ。

 これら専門高校や専門学科の中には、入る生徒が少なく辞めて行く生徒が多いという「二重苦」にあえぐ学校が多いわけだが、授業の様子などを見ると至ってまともだ。
 工業系の学校だと、先生自身が「匠」みたいなところがあるから、師匠と弟子みたいな関係が出来上がっていて微笑ましい。
 商業系の3年生あたりだと、立ち居振る舞いから言葉遣いまで、明日から出勤して下さいと言ってしまいそうなほど完成している。
 もちろん、うまくはまらなかった生徒もいるわけだが、8割9割の生徒はちゃんと3年間を全うしているのである。
 周りが意欲を失くし脱落して行く中で、残った生徒はたくましいぞと私はいつも思っている。

 かれらは高校3年間で偏差値は伸びていないかもしれない。
 いや、ほとんど伸びていないだろう。
 だが、その分技術と人間力を伸ばしている。

 普通科も同様で、いわゆる低偏差値の学校でも、やりがい生きがいを見つけた生徒は、意欲的な学校生活を送っている。
 まあ、リーダーシップを取れない(取ったことがない)生徒が大多数なので、先生がかなり強力にリードしなければならないというのはある。
 教える内容も、高校でこの程度?と思わざるを得ないが、義務教育レベルの知識があれば人生何んとかなる。

◆先生も施設も見劣りしない
 生徒が集まらなかろうが、辞めてしまおうが、必要な施設設備はきちんと不公平なく整える。
 これが公立のやり方であり使命である。
 ICT環境だってトイレだって、偏差値順ということはない。

 先生の異動も、良くも悪くも平等だ。
 昨日まで偏差値70の学校、今日から40の学校、あるいはその逆。
 なんてことは、いくらでもある。
 だから、生徒が突然国公立や早慶上智に行きたいと言い出しても全然問題ない。
 
 県や県教委が、どの学校にも偏りなく人を配置し、予算を配分しているかは、ここを見れば分かる。
 魅力ある県立高等学校づくりの推進

 併願私立を確保できており、それで何ら問題ないという人はもちろんそれでいい。
 だが、どうしても公立でなければという人も当然いるわけで、そういう人にも胸を張って高校に入ってもらいたいと思うのである。