学校や塾の先生方は「バタバタしてまして」って言うんだろうか。
 あまり聞いたことがないので、学校界隈では流通していないのかもしれない。
 
 これ、昔からあるビジネス用語で、仕事が立て込んでいるというような意味合いだ。
 通常、難易度の高い仕事や重要な仕事に取り組んでいるような場合には使われない。
 こまごまとした仕事に忙殺されているといったニュアンスだ。

 使用場面は、取引先などへの対応が遅れたりしたときが多い。
 「ご連絡遅れて申し訳ありません。バタバタしてまして」といった具合に用いる。
 つまり、言い訳。

 私自身はこの言葉を使わない。
 「バタバタ」するほど仕事がないからだ。
 人生で一度でいいから「バタバタ」してみたい。
 何ならそのまま空を飛んでどこかに行ってしまいたい。

 今の若い人はこんな古めかしい言葉は使わんだろうと思っていたら、これが何といまだに現役として活躍している模様で、つい最近も耳にした。
 それも一人や二人じゃない。
 私は聞いていて、何か引っかかるものがあった。
 それで、熟考すること三日三晩、ついにある結論に達した。

 使用ルールが変ったのだ。
 私世代では頻繁に用いられていた「バタバタ」であるが、割と近しい関係の中で用いられるもので、お得意様やそれほど懇意でない相手には使わなかった。
 「ゴメン、ちょっとバタバタしてたもんで」。
 こんな軽いノリで使われるのが「バタバタ」だった。
 だが、今の若い世代は、私のような年長者に向かって、ごく普通に「バタバタ」しちゃうのだ。

 そういう言い方、やめたほうがいいぞ。
 と、ついつい説教してしまうが、この爺さん何言ってるの?
 そう思われているんだね。
 注意しよう。
 今やマイナーからメジャーに昇格した「バタバタ」であるから、皆さんも鳥のように胸を張って「バタバタ」してもらいたい。

◆「いろいろ」って、何やってるんだ
 話のついでに「いろいろ」についても触れておこう。
 こちらは少し真面目な話だ。

 またもや最近会った若者のことだ。
 格好良く言えば経営者、起業家といったところだが、ある時はセミナー講師、またある時はコンサルタント、さらにはイベント企画やら司会者やらと大忙し。
 で、結局あなたは何屋さん?
 どの一つを取ってもその道のプロが山ほどいるというのに、そんなに手を広げて勝ち目はあるのか。
 仕事頼むなら、普通は「いろいろ」やっている人より、「これしか」やっていない人だろう。
 ゼネラリストという言葉もあるが、仕事で成功したければスペシャリストだと思うがね。
 で、案の定、全然儲かっていない。

 「今、仕事なにやってるの?」
 「はい、まあ、いろいろと」
 「将来の目標は?
 「はい、いろいろあって・・・」
 ダメだこりゃ。

 「いろいろ」を使っていいのは二十歳まで。
 学校で、そう習わなかったか。
 大人になったら「いろいろ」は通用しないんだ。

 今になって「いろいろ」やってしまう人は、たぶん学校にいる時、「いろいろ」やってこなかっただろうね。
 学校ってところは、馬鹿みたいに「いろいろ」なことをやらせる。
 自然科学、人文科学、社会科学、芸術、スポーツ。
 そんなにやってどうするんだ。

 それはね。
 大人になって「いろいろ」やっちゃう間抜けで役立たずな人間にならないためだ。
 とりあえず、全部必死でやってみな。
 中途半端じゃダメだぞ。
 すべて全力だ。
 そうすりゃ、好きになることと、どうしても好きになれないことが分かってくるだろう。

 「いろいろ」やれるのは10代の特権だ。
 若い君たちには「いろいろ」やってる大人が眩しくみえるかもしれないが、大人同士の間では能無し扱いされているんだ。
 
 「いろいろ」やって「バタバタ」する大人にならないでくれ。