日々学校改革に挑んでいる皆さんに大事なアドバイスを送っておこう。
 今のキーワードは「廃止」だということだ。

 たとえば最近もこんなニュースがあった。

 神戸の小中学校に「チーム担任制」導入へ いじめや不登校に対応「利点大きい」23年度から一部で試行(神戸新聞 12月27日)

 神戸市教育委員会の報道発表資料はこちら。

 市立学校における「学年(チーム)担任制」のモデル実施について(12月16日)

 そういう言い方はしていないが、要は従来行われてきた固定担任制を廃止するということだ。

 「学年担任制」自体はそれほど目新しいものではない。
 すでに実施している学校もある。
 ただ、教育委員会が主導し、市全体として取り組もうという動きは全国初だ。
 
 これによりどんなメリットがあるか、逆にどんなデメリットがあるか。
 いちいち解説しなくても、教育関係者の皆さんならすぐにお分かりだろう。
 だから、今回それについては深入りしない。

 「廃止」がトレンドという話だ。
 定期考査の廃止。
 宿題の廃止。
 担任制の廃止。

 今は「廃止」がアピールになる時代。
 むろん昔から何かを「廃止」する動きはあった。
 破壊しなければ建設できないように、「廃止」しなければ「新設」できない道理であるから、「廃止」と「新設」はコインの表裏である。
 二つはセットで行われなければならない。

 だが「廃止」には、暗いとか後ろ向きといったイメージが強い。

 ところが、現代における「廃止」には、今まで以上に前向きなイメージが与えられるのである。
 古い何かを壊すことだけで高い評価が与えられる。
 言い方を変えれば、「廃止」した後、どうするのかは、どうでもいい。
 「廃止」は単独で勝負をかけられる言葉となったのだ。

 もちろん、「廃止」した後どうするのかは言わなければならないが、やってみなければ分からない。
 なので、これは適当に作文しておけばいいだろう。
 教員の働き方改革、生徒の自主性伸長、いじめ撲滅といったワードを混入させるのがコツだ。
 あと、多様性、持続性などもまぶしておくとそれらしい雰囲気を醸し出すことができる。

 と、まあ、多分に皮肉を込めて言っているのだが、実際問題として「これって、要らないんじゃない?」ということが身近に溢れているのも事実だ。
 だが、公立であれば先輩校長がはじめたこと、私立であれば創業者がはじめたことはなかなかやめられない。
 最初の発案者が目の前にいればなおさらだ。
 
 しかし今、追い風が吹いている。
 「廃止」こそがトレンドなのだ。
 「廃止」、よくやった。
 「廃止」、斬新だ。
 そう言われる時代なのだ。

 この機に乗じて、今まで何となく続けてきたことや、やめるにやめられなかったことに「廃止」のメスを入れよう。