今日取り上げるのはこちらのニュース。
昨日(12月26日)の読売新聞オンラインの記事だ。
都立高が塾講師招き「校内予備校」開設へ…受講費用は都教委が負担、経済的格差減らす狙い(読売新聞オンライン 12月26日)
他紙は扱わず読売新聞のみの記事ということから、都教委が公式に何かを発表したわけではないと分かる。
念のため都教委HPで報道発表資料を確認したが、それらしいものは見つからなかった。
他紙が追随しないのは、ニュース価値が低いからだろう。
予算額も1億円程度と少ない。
1億円は個人にとっては大金だが都の予算規模からすれば大した金額ではない。
令和4年度の都の教育予算は、一般会計総額7兆8010億円の約15%に当たる8764億円である。
そのうちの1億円。
12か月で割れば、月当たり約833万円。
運営を一社が独占したとしても、この程度の売上にしかならない。
仮に受験産業への支援という隠された狙いがあったとしても、これでは少なすぎる。
実施校はこれから選定するというが、どういう基準で選ぶのかはこの記事からは分からない。
進学指導重点校や進学指導特別推進校など上位校を対象にした場合、「経済的な事情で十分な受験対策ができず、進学や希望する進路を諦める生徒を減らす狙い」(記事より)から外れる。
上位校の生徒は、その必要があればすでに予備校や塾に通っているだろう。
また、今は通っていなくても必要が生じれば、それが可能な家庭の子弟が多いだろう。
すなわち、ここには公の支援に対するニーズはない。
都立中堅以下校を対象とした場合はどうだろう。
記事では「都教委は予備校が持つ豊富な受験ノウハウを生徒に身につけさせ、進学率を上げたい考えだ」とあるが、中堅以下校の進学率が上がらないのは受験対策以前に基礎学力が不足しているからである。
また、一定の学力があり、十分な受験指導を施せたとしても、4年間の学費が壁となって大学進学を断念せざるを得ないケースが多いだろう。
というわけで、ここにも公の支援に対するニーズはない。
記事の最後に都立松原高校(世田谷区)の校長コメントが紹介されている。
「学校の教員は通常の授業のほか、生活指導も担っており、個々の受験対策まで手が回らないこともある。(以下省略)」。
教員の働き方改革にもつながると言いたいのか。
しかし、進学実績が上昇し、経済格差が是正され、教員の働き方改革が促進されるといった都合の良い政策が、僅か1億円の投資で実現できるのだろうか。
額が少ないのだから、もう少し狙いを狭めたほうが良いのではないか。
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