まだ公立入試の合格発表が終わっておらず、さらにその後に欠員募集なども控えているため、2023度(令和5年度)入試は完全に終了したとは言えない。
 が、この時期はまた、次年度生徒募集に向けて始動しなければならない時期でもある。
 
 私は細々と講演活動も行っている。
 コロナの影響でこの3年間は、元々少ない講演会やセミナーがさらに減少したが、メインの仕事ではないので、「まあ、いいか」といったところだ。
 だが、コロナも一段落ということで、次年度に関してはすでにいくつかの依頼がきている。

 そのうちの一つは、生徒募集で伸び悩む県立高校からのものだ。
 職員研修会で募集についての話をしてくれないかというオーダーだ。 
 ちなみにこれは、埼玉新聞「教育セミナー」講師派遣を通じての依頼だ。【PR】

 学校側の希望日は7月で、そろそろ夏休みに入ろうかという時期だった。
 私の予定は空いていたので、とりあえず依頼は受けた。
 だが、「その時期から出来る募集活動には限りがあるので、あまり有効なアドバイスは出来ないかもしれませんよ」とは伝えておいた。
 で、結論を先に言っておくと、その後「2か月前倒しして5月でどうか」と打診があったのでOKした。

 公立の生徒募集活動は4月から始動する。
 大宮高校のように、すでに今月(2月)から新3年生向け説明会を実施している学校もあるが、例外中の例外だろう。
 たいていは、人事異動が終わり、新たな仕事分担が決まり、4月に入ってようやく動き出す。
 
 生徒募集のために動けるのは、11月いっぱいまでである。
 中学校では11月末に3年生の期末考査が行われ、その結果を受けて三者面談が行われる。
 志望校決定はこのタイミングである。

 もちろん、それより後、年明けになって決める生徒もいるし、2月の出願直前になって決める生徒もいる。
 だが、大勢はすでに12月までで決しているのである。

 そう考えると、生徒募集活動の期間は、4月からカウントしたとして11月までの8か月間となる。
 4・5・6・7月が前半戦、8・9・10・11月が後半戦、それ以降が延長戦。

 前述の県立高校の話に戻れば、7月の研修会というのは、前半戦が終わった段階で、後半戦の戦い方をアドバイスするようなものだ。
 それでも、前半戦で互角かそれに近い戦いをしてくれていれば、効果的な作戦も提示できるだろう。
 しかし、前半戦で戦いらしい戦いをせず、大差がついていたとすれば、そこから可能な作戦は「負けるにしても、次につながる負け方をしよう」というくらいしか思いつかない。

 たった8ヶ月しかない生徒募集戦線において、前半4か月にこれといった動きをしなければ、はっきり言ってこの時点で敗戦確定。
 むろん、募集に心配のない有名校なら、後半戦から本腰入れればそれでもいい。
 私はこれを「王者の戦い」とか「強者の戦い」と呼んでいる。

 だが、知名度に劣る学校が、これと同じ戦いをしてはいけない。
 取るべき作戦は「弱者の戦い」である。

 強いチームはシードされて2回戦から登場。
 弱いチームは1回戦、いや予選リーグから登場し、最後は敗者復活戦まで戦う。
 早く始めて遅くまで戦う。
 
 4月になって、「さあ、今年のパンフレットどうしよう」などと言っている学校は、午後6時になっても「支度中」の看板をぶら下げている居酒屋のようなもので、それではお客はみんな他にとられてしまう。
 年度末年度初めが目の回るような忙しさであることは、経験者としてよく分かる。
 が、現状打破を目指すなら、今すぐ始動した方がいいだろう。