学校はSNSを活用すべきかどうか。
 よく受ける質問だ。
 
 実はこの件に関して、私自身の見解も揺れ動いている。
 以前にもSNSをテーマに何本か書いているが、その頃と今では考え方が違っている部分もある。
 例えば、こんなのがある。

 ホームページ同様、学校公式ツイッターが当たり前の時代は来るか(2020年8月2日)

 インスタやツイッターによる情報発信は生徒募集につながるか(2022年4月19日)

 2本目の記事はちょうど1年くらい前に書いたものだ。
 この中で、「SNSによる情報発信が、生徒募集にどれだけ貢献するのか。今のところ、よく分からない」と書いている。
 1年経った今もよく分からないのだが、いま現在は、募集の成功には必ずしもつながらないのではないかという方向に傾いている。

 たとえば、こんな選択肢があったとする。
 1 募集に効果があると思う。
 2 募集にある程度効果があると思う。
 3 どちらとも言えない。
 4 募集にあまり効果がないと思う。
 5 募集に効果はないと思う。

 無難に「3」を選ぶ。
 これも今の考えに近い。
 が、それ以外だったら「4」を選びたい。

 募集の成功というのは、量と質の両面から考える必要がある。
 今日の本題ではないので詳細は省くが、量の成功とは単純に受験者数を増やすこと。
 質の成功とは学力が高い生徒や志望動機が明確な生徒、第一志望の生徒を集めることだ。
 SNSによる発信は、量的な面での成功には多少は貢献しそうだが、質的な面での成功には貢献しない。
 合わせると、あまり効果がない、となる。

◆無料の効果は知れたもの
 SNSによる発信は基本無料である。
 それに対し、パンフレットやポスターによる発信をしようと思ったら、その制作に数十万~数百万の費用がかかる。
 ホームページも日々の発信はそれほど費用はかからないが、サイト制作にはやはり数十万から数百万の費用がかかる。

 そのことから、所詮は無料である媒体に多くの効果を期待するのは、虫が良すぎるのではないかという結論に至る。
 
 有名企業や有名ブランドも、さすがに今の時代、TwitterやInstagramによる発信をしているが、かれらは桁違いの費用を広報や広告に投じているのであって、SNSがメインなはずがない。
 あくまでもサブ、補助的な役割という位置づけだろう。

 よって、今日現在の私の結論は、次のようになる。
 1 ただで出来るのだからやってみてもいい。
 2 だが、ただで出来ることには自ずから限界があり、大きな効果は期待しないほうがいい。
 3 効果が僅かなのだから時間や人的リソースを必要以上に投入しないほうがいい。
 まあ、こんなところ。

◆同じコンテンツを複数のSNSで
 一口にSNSと言っても、機能はそれぞれ異なる。
 また、ユーザー層も異なる。
 本来ならターゲット別に情報発信したいところだが、それには膨大な手間がかかる。

 そこで、現在の流行は、一つのコンテンツ(動画など)を、複数のSNSで使い回す方法のようだ。
 とりあえずそれでいいと思う。

◆他では得られない情報があれば
 上記と矛盾するようだが、フォロワー数や閲覧数を増やしたかったら、そこでしか得られない情報を流すといい。
 パンフレットにもウェブサイト(ホームページ)にも載っていない、特定のSNSでしか見られない情報。
 それなら見てもいいかなと思う。

 私の見聞の範囲では、SNSの活用で志願者が大幅に増えたとか、志願者の質が劇的に変化したとか、そのような事例はない。

 ただし、2023年の今の時点では効果は知れたものであっても、広報・広告のあり方や手法が今後変わって行くのは疑いのないところだ。
 SNSは進化している。
 そのことは忘れてはならないだろう。