例年夏休みは部活取材と決まっている。
 「よみうり進学メディア埼玉版9月号」では、部活特集を組んでいる。
 9月最初の発行なので取材は夏休み中になる。

 昨年は埼玉栄吹奏楽部、県立松山女子合唱部などを取材した。
 どちらも埼玉県代表であり、全国トップレベルの実力を誇る。
 さて、今年はどの学校、どの部活を取り上げようかと思っていたところ、編集部の方から開智のハンドボール部を取材して欲しいという依頼があった。

 えっ、何それ?
 思わず聞き返した。
 男子ハンドなら浦和学院、浦和実業、公立なら川口東、越谷南。
 女子ハンドなら埼玉栄、浦和実業、公立なら越谷南、川口北。
 思い浮かぶのはこのあたりだろう。

 でもまあ編集部の意向には逆らえない。
 雇われライターの身だから。

 部活のイメージが湧きにくい開智高校だが、前年度はベスト8に残った大会もあったし、3年生が抜けた今も部員16人というから、どうしようもない弱小チームというわけでもなさそうだ。
 顧問の吉田楓先生(保体)は教員3年目。自身は高校、大学とハンドを続けてきた本格派だ。
 なお、同部にはもう一人ベテラン顧問がいる。たぶん塾の先生方はご存知だろう。生徒募集担当の寿川智博先生だ。高校時代はインターハイにも出場している。すでに還暦を超え、穏やかな笑顔と語り口が印象的な今の寿川先生からは想像できないだろうが、ものスゲー選手だったのだ。これは伝聞ではない。私は、この目で見ている。

 で、話を吉田先生に戻す。
 練習は週4日、2時間程度と少ない中で、どんな指導目標を立てているのか聞いた。
 部活を通じて自分を表現できる生徒を育てたい。
 そう話していた。
 表現の中にはプレーそのもの、つまり身体で表現するということも含まれるが、それだけではなく、自分の考えを持ち、それをしっかりと人前で主張できるという意味での表現力を育てたいという。
 学力の高い子たちなので、人の言うことを理解するのは得意だ。覚えることも得意。だが、それだけでは社会で通用しない。部活を通じて、将来役に立つ力を身に付けることも大きな目標だ。

 そういう指導方針だから、練習中も「こうしなさい」という命令形よりも、「どうすればいい?」といった疑問形が多用される。
 このあたり、いかにも平成生まれの令和の指導者だ。

 吉田先生はこんな話もしていた。
 「部活の意味は、生徒にもう一つの居場所を作ってあげること」。
 スポーツの特性で、強い弱い、勝った負けたばかりがクローズアップされがちだが、そう、部活はもう一つの居場所なのだ。これがあるから、勉強も頑張れる。
 よくぞそこに気づいた。若いのに大したものだ。
 (と、上から目線)

 部活のあり方は決して一つじゃない。

 余談だが、iPhoneで動画を撮影していたら、「高音注意」のアラートが出て一時操作不能になった。初めての経験だ。それだけ暑かったということだ。