読者の方から教員採用試験合格の知らせが届いた。
 この方は、今年から始まった「セカンドキャリア特別選考」を受け、合格した。
 この選考は、民間企業等で5年以上の経験(本採用)がある人が対象となっている。試験を受ける時点では免許の有無は問われない。
 免許が無い人には2年間の猶予期間が設けられており、その間に取得すれば良い。

 この方も、いま現在は免許を持たないので、現職を続けながら2年かけて単位を取得する予定だという。
 実際に教壇に立つのは2年先になる。

◆54歳からの挑戦
 何より嬉しいのはこの年齢。
 よくぞ決心した。
 かなり上から目線の物言いだが、私の教え子たちは、上はすでに還暦超え、一番若い方でも50代前半なので、どうしてもそういう見方になる。

 教員をやっているとあまり実感はないかもしれないが、50代はキャリアの分かれ道なのである。
 簡単に言うと、先が見えるということだ。

 本社に残り、幹部への道を突き進むか。それとも、支社支店への異動や子会社への転籍を受け入れるか。場合によっては早期退職制度など利用して会社を去るか。

 そんな中、いっそ自分で会社を興そうとか、まったく異なる世界に飛び込んでみようという人が数は少ないが存在する。
 かなりのバクチなのであるが、私自身がそれに近い人生を歩んできたので、そういう方々を心から祝福し、応援したいと思う。

 私の年齢から見ると、「もう50歳」ではなく「まだ50歳」なのである。
 余生と言うには長過ぎる年月が残されているので、存分に楽しみ、また活躍してもらいたいと思う次第である。
 
◆民間経験の活かし方
 民間経験者が学校で成功するには、どうしたらいいか。
 これについては、採用する側も、もしかしたら良く分かっていないかもしれない。まあ、民間経験の無い人達が採用側に回っているので、仕方ないが。

 採用試験には面接がある。
 想像だが、そこでは、民間経験を学校でどう活かしたいか、といった類の質問があるだろう。
 受験者は、外から見た学校の問題点をあげ、改善策・解決策などを述べるだろう。
 それはそれで大事な視点だが、真の問題点は、中に入ってみて初めて分かる場合が多い。

 民間経験者には、まず学校特有の文化やシステムをいったん受容してほしい。
 いちいち民間と比べるんじゃない、ということだ。
 これは、先生たちが別の学校に異動した場合も同じだ。いちいち前の学校と比べるんじゃない。

 民間経験者を採用するのは、学校の文化やシステムを民間流に改めて欲しいからではない。
 民間流にしたいのなら、学校を株式会社にするのが手っ取り早い方法だ。

 まずは観察である。
 よほどの節穴ではない限り、違いはすぐに見つかる。
 赴任したその日のうちに、10も20も発見できるだろう。
 が、そこですぐ民間流を持ち出してはいけない。

 さまざまな違い、あるいは問題点と感じたことがらのうち、どこに民間の知恵や経験やシステムを注入したらいいかを考えることだ。
 一番いいのは、先生たちへの聞き取りだ。
 「なぜ、そのようにしているんですか?」
 まず聞いてみよう。
 お客様の悩み事や迷い事を聞き取るのは、民間経験者ならお手のものだろう。
 
 その際、「民間ではこうしてますよ」は封印しよう。それは今言わなくてもいい。
 なぜなら、民間で鍛えてきた聞く力を発揮しているうちに、向こうから「民間ではどうやっているんですか?」と聞いて来るはずだからだ。提案はそれからでも遅くはない。

 せっかく始まったセカンドキャリア特別選考であるから、長く続いてもらいたいものである。