埼玉県教育委員会は3月11日、「新校基本計画」を策定した。
 2026年度(令和8年度)、魅力ある県立高校づくり第2期実施方策に基づき6つの新校が誕生する。
 今回発表された計画は、その基本的な方向を定めたものである。

 校名は未定だが、設置学科と募集人員が示されている。

●和光新校
(場所:現在の和光国際高校)
 普通科240人
 国際科80人
 和光新校(仮称)基本計画

●岩槻新校
(場所:現在の岩槻高校)
 普通科280人
 国際教養科40人
 岩槻新校(仮称)基本計画

●秩父・皆野新校
(場所:現在の秩父高校)
 普通科160人
 国際教養科40人
 秩父・皆野新校(仮称)基本計画

●越生・鳩山新校
(場所:現在の越生高校)
 普通科120人
 美術表現科40人
 越生・鳩山新校(仮称)基本計画

●八潮新校
(場所:現在の八潮南高校)
 普通科120人
 ビジネス探究科120人
 八潮新校(仮称)基本計画

●大宮工業・浦和工業新校
(場所:現在の大宮工業高校)
 機械工学科  80人
 電気工学科  40人
 建築デザイン科80人
 ロボット工学科40人
 情報サイエンス科80人 
 大宮工業・浦和工業新校(仮称)基本計画

◆統廃合が意味すること
 本ブログ読者の皆さんは、県内高校事情に詳しい方がほとんどと思われる。
 したがって、改めて説明の必要はないが、県が進めている、いわゆる統廃合について、一応確認しておこう。
 
 これは、世間一般の方が想像する合併(たとえば企業合併など)ではない。
 新校に関する県民コメントに「和光国際と和光では(学力的に)釣り合わない」などという意見があったが、両校の生徒が一緒になるわけではない。
 和光は5年度募集を行っていないので6年度は2・3年生だけの学校、7年度は3年生だけの学校となり、新校がスタートする8年度には全員が卒業し和光の生徒は誰もいなくなる。

 他の新校も同様で、6年度の募集を行っていない岩槻北陵、皆野、鳩山、八潮、浦和工業は2年後には全員卒業してしまい、新校には移ってこない(と言うか、移りようがない)
 逆に、6年度または7年度に和光国際、岩槻、秩父、越生、八潮南、大宮工業に入学した生徒は、新校の生徒として卒業することになる。

 結局のところ、2校が一緒になる体(てい)ではあるが、片方はそのまま存続し、もう片方は事実上消滅するのである。

◆今までにない新しい学科
 新校開校に伴い、今までの県立高校にはなかった新しい学科が開設される。

 和光新校は現和光国際高校の外国語科を発展させる形で「国際科」を開設する。
 岩槻新校は現岩槻高校の国際文化科をを発展させる形で「国際教養科」を開設する。
 秩父・皆野新校も「国際教養科」を開設する。
 越生・鳩山新校は現越生高校の美術科を発展させる形で「美術表現科」を開設する。
 八潮新校は現八潮南高校の商業科、情報処理科を発展させる形で「ビジネス探究科」を開設する。
 大宮工業・浦和工業新校は、現大宮工業高校の機械科、電気科、建築科を、それぞれ「機械工学科」、「電気工学科」、「建築デザイン科」とし、電子機械科を「ロボット工学科」と「情報サイエンス科」に再編する。
 
◆生徒募集面から見た新校・新学科の将来
 和光新校は、実質的には現和光国際高校であるから、外国語科が国際科に変わっても、そのまま人気は継続するだろう。
 6年度入試でも普通科、外国語科共に1.45倍を超える高倍率だった。

 岩槻新校は、実質的には現岩槻高校であり、6年度入試でも普通科は1.19倍、国際文化科は1.48倍であったから、今のところ募集面の心配はなさそうだ。
 
 秩父・鳩山新校は、現秩父高校が6年度入試でも定員を割っており、新学科開設で盛り返せるかどうか。

 越生・鳩山新校は、現越生高校の美術科は6年度入試で定員を確保しているものの、普通科は定員割れだ。「美術表現科」はアニメなども学べるということで人気が出そうだが、普通科が課題だ。

 八潮新校は、現八潮南高校の商業科と情報処理科は6年度入試でも定員を確保しているが、普通科は定員割れこそしていないがぎりぎりだ。80人募集で1.04倍であるから120人募集でどうかという心配はある。

 大宮工業・浦和工業新校は、現大宮工業高校の4学科が6年度入試ではいずれも定員割れしていることから、学科名称を変えても引き続き苦しい戦いとなりそうだ。ただ、「ロボット工学科」は目新しく、これが起爆剤となる可能性はある。

 各校に対し偉そうにアドバイスをするなら、「戦いは始まったと思え」ということだ。
 来る7年度募集はまだ新校としての募集ではないが、入ってくる生徒は新校の生徒となり、新校の卒業生となるのであるから、可能な限り早い段階から「現と新を一体化」させた募集戦略をとるべきだろう。