穏やかな一日。花見にでも行けばよかった。
 さて、本日は主に私立学校の先生向けである。
 公立の先生、塾の先生にはさらっと目を通すか、無視していただこう。

 東京都教育委員会が「都立高校の魅力向上に向けた実行プログラム」を策定し、発表した(令和6年3月28日)。
 都立高校を県立(公立)高校と読み替えれば、埼玉県の先生方にも参考になるのではないか。
 むろん埼玉県が東京都と同じ施策をとるかどうか分からないし、また、その必要もないわけだが、「魅力ある高校」というものを公立側がどのように考えているかを知るのも悪くない。

 データはこちらにある。
都立高校の魅力向上に向けた実行プログラム <令和6年更新版>について

都立高校の魅力向上に向けた実行プログラム < 令和6年更新版 >
 
 タイトルは同じだが、上が概要(4ページ)、下が本文(約60ページ)である。

 さすがに60ページを完読するのは骨が折れる。
 まず概要に目を通し、興味関心のある部分だけ本文に当たってみる方法でいいだろう。

 大きく三つの施策が提示されている。
Ⅰ 自ら未来を切り拓く力の育成
Ⅱ 生徒目線に立った支援の充実
Ⅲ 質の高い教育を実現するための環境整備

 今回、これらについて、「もし完全実施された場合、私立にとって脅威になり得るのはどの政策か」という視点で見て行く。
 公立と都立は広義では共に公教育を担う存在である。
 したがって、いつも言う「競争と協調」が必要なのだが、こと生徒募集に関しては「競争」の部分をより強く意識せざるを得ない。
 そこで、仮にそれが完全実施されたら、公立の魅力が増し、私立の脅威になるだろうと思われる点に注目して見て行こうというわけである。

 では、大項目ごとに見て行こう。

Ⅰ 自ら未来を切り拓く力の育成
 ここでは3項目が挙げられている。
 「TOKYO スマート・スクール・プロジェクトの推進」
 「島しょにおける教育の充実」
 「グローバル人材の育成 」
 「理数教育の充実」

 ここで脅威になりそうなのは「理数教育の充実」だろう。
 「グローバル人材の育成」は現状ではむしろ私立に分がありそうだが、埼玉の私立は「理数イメージ」がない。
 公立のような「理数科」がないし、SSH指定校もない。
 もちろん個々には頑張っている私立もあるが、全体として「理数イメージ」が弱く、「グローバルイメージ」が勝っている。
 公立がこの施策をさらに徹底した場合、「理系を目指すなら私立より公立」となる可能性がある。

Ⅱ 生徒目線に立った支援の充実
 不登校生徒・中途退学者に対する支援
 ユースヘルスケアの推進
 日本語指導が必要な生徒に対する支援
 都立高校における特別支援教育の充実
 保護者等の教育費負担の軽減

 この大項目は、いわば公立としての使命についてである。
 ぜひ推進していただきたところだが、これによって私立が生徒募集上、劣勢に立たされることはないと考えられるので、いったんスルーしよう。

Ⅲ 質の高い教育を実現するための環境整備
 普通科の活性化
 専門学科(職業学科)の活性化
 理数等に関する学科の設置
 入学者選抜の改善
 教員の資質・能力の向上
 働き方改革の推進

 これらの中に生徒募集上の直接的脅威はないが、「教員の資質・能力の向上」、「働き方改革の推進」は、人事・採用面で公立高校の魅力となる可能性がある。
 私立の場合、「教員の資質・能力の向上」は、個人や個々の学校に任されているのが現状だ。私立協会を中心に私立全体で取り組むべき課題だろう。
 「働き方改革の推進」は国家的課題であるから、私立と言えども無視できない。先生にとって働き甲斐があり、待遇も良い職場であることは、学校全体のブランドイメージにも関わってくるので、直接ではないが生徒募集に影響を及ぼすことも考えられる。

 以上、概略であるが、本文を読むと、公立(都立)が魅力ある学校とはどういう学校と考えているかが、さらに明確になる。また、そのためどんな施策が必要と考えているかも分かる。
 別に真似をする必要はない。それでは私立の魅力が失われてしまう。
 ただ、「敵を知り~」は兵法の常道であるから、公立(都立)の話は関係ないと無視を決め込まないほうがいいのではないかと思うわけである。