2、3日前のニュースから。

 総合型選抜に有利だから?…高校の「探究学習」で大学の研究者たちが疲弊 話がかみ合わず「1人に10時間」かかったケースも(12月12日 AERA DIGITAL)

 高校の「探究学習」が大学入試の総合型選抜や学校推薦型選抜で有利とされる一方で、大学研究者に過度な負担を強いている現状を報じた記事である。

 実際にどのくらいの数の研究者(教授など)が影響を受けているのかや、どのくらいの時間が奪われているのかは不明だ。
 まだ、大学側の本格的な調査が行われたわけではない。
 負担が大きいという嘆きを記者が聞きつけて、取材し記事にしたというレベル。
 
 記事によると、高校生が研究者に対し、直接メールを送ってきたり、面会を求めるケースもあるという。
 簡単な質問ならまだしも、研究室訪問やオンライン面談を求められることもあり、1人に10時間以上対応したケースもあるのだそうだ。それで、新聞記事のセオリーにしたがって「10時間」という大きな数字を見出しにした。

 高校生が、探究を進める中で疑問に突き当り、その道の専門家を探り当て、質問メールするとは大したものだと思う。
 なかなかいるもんじゃない。
 ただ、常識的に考えれば、まずは目の前にいる高校の先生に質問したり相談したりするのが先で、それをすっ飛ばして大学の先生というのは、そんなに多くないと想像する。
 相談された高校の先生は、「大学の先生に聞け」などと無責任なことは普通言わない。一緒に考え、それでもだめならアプローチの仕方をアドバイスする。

 なので、本来業務に差しさわりがあるほど質問などが殺到するとは思えないのだが、と言って、少ないから許されるというものでもない。
 ここは、きちんと研究のルールや世の中のルールを高校生に教えておく必要はあるだろう。大学に行けば、もっと探究しなければならないのだから、教えるのは今のうちだ。

 大学の研究者としては、「質問は高校から大学のしかるべき部門を通して受けており、個別には対応しかねる」というのでも構わないのだが、ここに一つ厄介な問題が横たわる。
 高校生の探究学習は、大学入試で有利になるとされ、受験対策の一環として利用される傾向が強まっている。また、大学側は大学側で、これを学生募集の方策の一つとしている場合も多く、冷たい対応がしにくいという側面もある。

 総合的な探究の時間(総探)は、高校教員にとって大きな負担になると、始まる前から言われていたと思う。
 生徒たちに真剣に取り組ませようと思えば思うほど、先生の負担も増えるし、内容によっては大学や企業や行政といった外部との連携も必要になる。
 そのことは学習指導要領にも示されている。だが、その一方で、「場合によっては、相手に迷惑を掛けることなども予想される」ので、連携に当たっては、「外部人材に対して、適切な対応を心掛けるとともに、(中略)十分な打合せをする必要がある」とも。
 
 探究学習を継続、発展させて行くためには、高校現場と大学との間で、制度的な調整や支援の仕組みづくりが必要ということらしい。