教員希望者の減少。
教員生活を全うできなかった人間が言うのもおこがましいが、深刻な問題だ。
今日のニュース。
教職免許、必要単位を削減へ 志望学生の負担を軽減―文科省(12月18日 時事通信)
教員養成の根幹に関わる大きな動きと見ることができる。
だが、「この単位削減だけで志望者が劇的に増える」と考える関係者は極めて少ないだろう。
中には「的外れ」と言う人さえいる。
志望者増に直結しそうもないのは、教職免許取得のハードルは単位数ではないからだ。
教員養成学部以外の学生にとって、卒業単位に含まれない単位を取るのはたしかに高いハードルではある。
しかし、取得単位数のことよりも、「入職後の過酷な勤務実態(長時間労働や精神的負担)」と「給与」とのアンバランスが教職を避ける理由だろう。
単位取得のハードルを少しばかり下げたところで、教職単位取得のモチベーションにはなるまい。
必要単位数の削減は、教員としての専門性の低下につながる可能性がある。
「教える技術」や「教科の深い知識」を学ぶ時間を削ることだからだ。
単位を取るのが簡単、採用試験を通るのも簡単となれば、十分な準備ができないまま教壇に立つことになるから、不安が増し、逆に志望を躊躇させるかもしれない。
現在の売り手市場において、学生は「教職課程が楽になったから」という理由では進路を決めないだろう。
教員の(先生の)職業としての魅力が回復しない限り、慢性的な教員不足は解消しないだろう。
おそらく文部科学省は、教育学部(教員養成学部)以外の他学部生の取り込みを狙っているのだろう。
今回の改正では「各学部の専門科目(20単位)」を教職単位として算入できるとしている。
これにより、これまで「教職課程は別枠で単位を取るのが大変だから諦めよう」と思っていた工学部、理学部、経済学部などの学生を取り込める可能性がある。
そう簡単な話ではないが、強い専門性を持つ学生を教育界に引き入れ、教育学部以外のバックグラウンドを持つ教員を増やせれば、教育界も変わってくるだろう。
教員採用における最強のリクルーターは先生その人である。
児童生徒の目の前にいる先生。
その人間性や技術に憧れて教職をめざす人は多い。
先生がいつも不機嫌で、疲れた表情で、文句ばかり言って、やる気が見えなかったら、子供たちが先生になろうなんて思うはずがない。
行政の重要な役割は、単位取得制度や採用試験制度をいじくり回すことではなく、待遇改善だろう。
職業自体の魅力があれば、どんな難関だろうと、そこに挑んでくる若者はいるはずだ。

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