校長就任前だったのが不幸中の幸いというべきか。
 この4月、茨城県立つくばサイエンス高校校長に就任予定だった副校長が離婚届偽造で逮捕された。
 マスコミ各紙・各局が扱っているが、いくつか紹介しておこう。

《離婚届偽造で逮捕》茨城県副校長が「週刊文春」記事発売翌日に元妻に慰謝料500万円要求文書 元妻は「憤りと悲しみを覚えました」(2月8日 文春オンライン)

離婚届を偽造疑い、別の女性と再婚の高校副校長を逮捕…4月に校長就任予定(2月8日 讀賣新聞オンライン)

 このような結果になったから言うわけではないが、それほどの驚きはない。
 むろん逮捕までは見通せなかったが、うまく行くわけはないと思っていた。
 茨城県教委も決していい加減な採用を行ったわけではないと思うが、まんまと詐欺師に引っかかってしまったわけだ。

 民間人校長についてはこのブログでも何度か取り上げているので、ご記憶の方も多いだろう。
 この3年間で3本の記事を書いている。

民間人校長が上手くいかない理由はここにある(2033年9月20日)

茨城県教委が民間人(素人)を大量採用する理由(2022年9月20日)

茨城県教委が民間人校長募集、その成功の条件を考えてみる(2021年11月5日)

 気が向いたら、どれか1本だけでも再読していただこう。
 一貫して民間人校長に否定的だったことが分かるだろう。

 いい加減民間人幻想から覚めてほしい。
 民間で成功を収めている人間が学校のような規則もうるさく、予算も少なく、仕事も多忙で、それでいて大した収入にもならない学校世界に来るはずないじゃないか。
 早々に出世レースから離脱して将来に希望を持てなくなった中間管理職とか、今回の逮捕者のように職を転々として何をやっても中途半端な人間が学校なら何とかなるだろうと応募してくるんだよ。
 学校を舐めるんじゃない。
 教育を簡単に考えるんじゃない。
 それよりも今いる人材を鍛え上げてプロの学校経営者に育てればいいじゃないか。

 部分的に、あるいは短期的に外部人材を登用することを全否定するわけではない。
 一種のカンフル剤として一定の効果はあるだろう。
 話題性という効果もある。
 (今回はマイナスの話題性になってしまったが)
 ただ、その程度である。
 
 長期的には内部人材の育成が最重要である。
 聞くところによると、わが埼玉県でも管理職候補者が激減しているというではないか。
 教員になりたい学生が減っているだけでなく、管理職になりたい教員も減っているのだ。

 民間人校長採用などやっている暇はない。
 ということで、埼玉県ではこうした見当違いの施策はずいぶん前に終わっている。
 仮に県の方針が変わり民間人教育長などが登場するとどうなるか分からないが、今のところその気配はないのでちょっと安心している。

 授業もしたことがない、担任も持ったこともないド素人には、まず教育の何たるかを理解してもらわなければならない。
 それには膨大な時間がかかる。
 それよりも、子供たちのことをよく分かった教員に異業種・異分野の体験をさせるほうがよほど早いし、効果が期待できる。

 最近変なのも現れているようだが、私は基本的に教員というのは学ぶことが好きな人間だと思っている。
 心底勉強嫌いな人間が先生になんかなるかよ、ということだ。
 むろん意欲や向上心の強弱に個人差はあるだろうが、学ぶことには前向きだ。
 だとしたら、学ぶ機会をどれだけ提供できるか、また、学べる環境をどれだけ整備できるかが勝負だ。
 もう一度言うが、民間人なら何かやってくれそうというのは、幻想か、はたまた空想か妄想に近いのである。