令和6年度入試が一段落したところで、改めて10月1日進路希望調査の重要性についてである。
 生徒募集活動において前半戦がきわめて重要であることは以前にも書いた。

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 今回は、令和6年度入試データをもとに、再び10月1日現在進路希望調査の重要性について語ろうと思う。

◆10月1日調査は人気投票なのか
 いまだに聞かれるのが「10月1日調査は人気投票のようなもの」という発言だ。
 時期的に考えれば、そのような性格を持っていることは否定できない。

 まだ学校選びのための行動が不十分であり、模試結果など手持ちの資料も少ない。
 だから、とりえあず知っている学校を書く。
 そういう生徒が一定数いるのは事実だろう。
 だが、全部が全部そのような生徒とは言えないわけで、よく行動し、よく調べ、不動の目標校と定めている生徒もこの時期いるのだ。
 人気投票などと軽く言い放つ方々は、そうした岩盤支持層の存在を無視していると言えるだろう。

◆実際に倍率が上がった学校
 令和5年10月1日現在調査で、前年同期を大きく上回った学校は、実際の出願でも前年同期を上回ったのだろうか。
 
 市立川越は前年同期の2.95倍から3.79倍と0.84ポイント上がった。実際の出願(志願先変更後の確定倍率、以下同じ)でも前年同期の1.36倍から1.49倍と0.13ポイント上がった。
 杉戸は調査では0.84倍から1.17倍と上がり、実際の出願でも1.02倍から1.20倍と0.18ポイント上がった。10月1日調査では3年連続定員割れだったので半信半疑で見ていた人も多かっただろうが、調査の数字は本物だったわけである。
 川口北川口春日部も調査では前年同期比で0.19~0.25ポイントの上昇を見せており、実際の出願でも前年同期を上回ると共に全県トップレブルの倍率となった。

 以下、10月1日調査で前年同期比で0.12ポイント以上の上昇だった20校の実際の出願倍率を見てみよう。
 (数字は上段が10月1日、下段が実際の出願)

市立川越 2.95→3.79(+0.84)
     1.36→1.49(+0.13)

杉戸   0.84→1.17(+0.33)
     1.02→1.20(+0.18)

越生   0.41→0.72(+0.32)
     1.08→1.15(+0.17)

大宮光陵(外国語コース)
     0.78→1.08(+0.30)
     1.08→1.15(+0.07)

富士見  0.43→0.69(+0.26)
     0.99→1.06(+0.07)

蕨    1.68→1.92(+0.25)
     1.34→1.50(+0.16)

川口北  1.16→1.40(+0.23)
     1.28→1.47(+0.19)

川口   1.47→1.68(+0.21)
     1.18→1.34(+0.16)

川口市立(スポーツ科学)
     1.63→1.84(+0.21)
     1.55→1.64(+0.09)

児玉   0.48→0.68(+0.20)
     0.81→0.90(+0.09)

春日部  0.99→1.18(+0.19)
     1.31→1.50(+0.19)

所沢西  1.23→1.42(+0.19)
     1.08→1.25(+0.17)

豊岡   1.21→1.40(+0.18)
     1.23→1.29(+0.06)

羽生第一 0.74→0.92(+0.18)
     0.92→0.93(+0.01)

朝霞西  1.20→1.37(+0.17)
     1.08→1.19(+0.11)

三郷   0.46→0.63(+0.17)
     0.82→1.03(+0.21)

妻沼   0.46→0.56(+0.13)
     0.85→1.02(+0.17)

浦和東  1.53→1.65(+0.13)
     1.22→1.18(-0.04)

三郷北  0.99→1.11(+0.12)
     1.01→1.06(+0.05)

和光国際 1.66→1.78(+0.12)
     1.44→1.46(+0.02)

 所沢西朝霞西は定員減の影響もあったが、実人数が増加しており、前年の定員で再計算しても上昇している。
 富士見三郷妻沼は10月1日現在調査では前年同期を上回ったものの、なお定員割れ状態だった。しかし、実際の出願ではいずれも1.00倍を超えた。富士見、三郷の実際の出願での定員超えは3年ぶりである。
 浦和東は10月1日調査では前年同期を上回ったが、実際の出願では前年同期を0.04ポイント下回った。上記20校の中で唯一の例外である。ただし全県普通科倍率は上回っている。
 児玉羽生第一は10月1日調査では前年同期を大きく上回ったが、その後の伸びを欠き、実際の出願での定員超えには至らなかった。

◆実際に倍率が下がった学校
 今度は逆に、令和5年10月1日現在調査で、前年同期を大きく下回った学校は、実際の出願でも前年同期を下回ったかどうか、である。

 川口市立は調査では前年同期の3.66倍から2.48倍と1.18ポイント下がり、実際の出願でも1.94倍から1.26倍と0.68ポイント下がった。
 市立浦和は調査では3.30倍から2.82倍と0.48ポイント下がり、実際の出願でも2.20倍から1.75倍と0.45ポイント下がった。
 所沢北は調査では1.73倍から」1.48倍と0.25ポイント下がり、実際の出願でも1.31倍から1.11倍と0.20ポイント下がった。
 熊谷女子は調査では0.99倍から0.75倍と0.24ポイント下がり、実際の出願でも1.13倍から0.99倍と0.14ポイント下がり、初の定員割れとなった。
 浦和は調査では1.58倍から1.36倍と0.22ポイント下がり、実際の出願でも1.55倍から1.38倍と0.17ポイント下がった。

  以下、10月1日調査で前年同期比で0.14ポイント以上の低下だった20校の実際の出願倍率を見てみよう。
 (数字は上段が10月1日、下段が実際の出願)

川口市立 3.66→2.48(-1.18)
     1.94→1.26(-0.68)

市立浦和 3.30→2.82(-0.48)
     2.20→1.75(-0.45)

鳩ヶ谷  1.93→1.51(-0.42)
     1.17→1.16(-0.01)

川越西  1.21→0.88(-0.33)
     1.10→1.02(-0.08)

所沢北  1.73→1.48(-0.25)
     1.31→1.11(-0.20)

松伏(情報ビジネスコース)
     0.68→0.43(-0.25)
     1.10→0.98(-0.11)

熊谷女子 0.99→0.75(-0.24)
     1.13→0.99(-0.14)

鶴ヶ島清風0.74→0.50(-0.24)
     1.09→0.80(-0.29)

狭山清陵 1.18→0.95(-0.23)
     1.11→1.02(-0.09)

浦和   1.58→1.36(-0.22)
     1.55→1.38(-0.17)

ふじみ野 0.92→0.70(-0.22)
     1.03→1.00(-0.33)

上尾南  1.13→0.92(-0.20)
     1.08→1.06(-0.02)

北本   0.72→0.54(-0.18)
     0.86→0.80(-0.06)

越谷東  1.08→0.90(-0.18)
     1.10→1.08(-0.02)

越谷南  2.24→2.06(-0.18)
     1.45→1.42(-0.03)

草加西  1.06→0.88(-0.18)
     1.14→0.98(-0.16)

宮代   0.82→0.65(-0.17)
     1.04→0.97(-0.07)

日高(情報コース)
     0.35→0.20(-0.15)
     0.95→0.58(-0.37)

桶川西  0.52→0.38(-0.14)
     0.83→0.38(-0.45)

所沢中央 1.25→1.11(-0.14)
     1.09→1.08(-0.01)

 以上20校の中に、実際の出願で前年同期を上回った学校はない。
 鶴ヶ島清風ふじみ野越谷東は定員増の影響があると考えられる。
 松伏・情報ビジネス、熊谷女子鶴ヶ島清風北本草加西宮代日高・情報コース桶川西は、10月1日調査時点で定員割れであり、実際の出願でも定員割れであった。
 ふじみ野上尾南は10月1日調査では定員割れだったが、実際の出願では1.00倍を超えた。

◆やはり、ただの人気投票ではない
 話は最初に戻るが、10月1日現在希望調査は、やはりただの人気投票で片づけられるものではないというのが結論だ。
 そういう要素もあるが、間違いなくその年度の傾向を表している。

 今回調査したのは普通科の「36校+4コース」である。
 普通科は全部で「98校+4コース」あるから、「40÷102=39.2%」で約40%である。
 いずれ残る60校についても調べてみるが、とりあえずこれくらいのサンプルがあれば十分だろう。

 前年同期との比較でみると、春日部は調査で0.19ポイント上昇、出願でも0.19ポイント上昇と完全一致している。
 これは偶然としても、川口北(+0.23→+0.19)、川口(+0.21→+0.16)、妻沼(+0.16→+0.17)、所沢西(+0.19→+0.17)、三郷(+0.17→+0.21)、市立浦和(-0.48→-0.45)、所沢北(-0.25→-0.20)、浦和(-0.22→-0.17)、草加西(-0.18→-0.16)、鶴ヶ島清風(-0.24→-0.29)のように、10月1日調査と実際の出願の上昇幅(下降幅)がかなりシンクロしている例も見られる。

 思い切った言い方をすれば、10月1日調査の数字(倍率)を動かすのは、各校の募集活動である。
 それ以後の数字(倍率)を動かすのは受験生や家庭の事情である。
 細かい話をすればきりがないが、そのくらいの意識を持って臨まないと現状は打破できないと思うのである。 
 
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