先日(9月27日)、埼玉県公立商業高校の校長会という場で講演をさせてもらった。
 校長会というくらいだから、出席者は皆さんその道のベテランで知識、経験とも私などに比べたらはるかに豊富だ。
 テーマは学校広報と生徒募集。

 8月には工業教育研究会というところで講演があった。
 ひと夏の間に、工業高校と商業高校の先生方の前でお話をするという、誠に貴重な機会をいただいたわけである。

◆商業高校の倍率、昨年は1倍超え
 令和6年度入試における商業高校(商業系学科含む)の全体倍率は、志願先変更時点で1.05倍だった。これは工業科の0.89倍、農業科の0.95倍よりも高い。また5年度の0.91倍を上回っている。
 6年度は統廃合予定の鳩山と皆野の募集がなかったので、それも全体倍率を押し上げた一因と考えられるが、そのあたりを考慮しても、やや上向きであると言える。

 商業高校(商業系学科含む)の全体倍率を引き上げているのは、上尾・市立川越といった普通科併設校の存在である。これらは学校としての人気が高いので、それが商業系学科の倍率を押し上げている面もある。
 6年度入試では1倍超えが6校8学科あったが、うち5つが情報処理科である。時代を反映し、情報処理科が商業高校(商業系学科含む)の全体倍率を押し上げていると言える。

◆早期始動の重要性
 商業高校の場合、第1回進路希望調査での倍率は低く、その後第2回希望調査から出願にかけて徐々に上がって行く。
 ここ数年の動向を見ると、第1回調査から出願にかけて全体倍率は0.22ポイントから0.25ポイント上昇している。6年度は第1回0.80倍から出願時1.05倍まで上がった。

 ということは、今年も第1回で0.80倍以上を確保できれば、最終的には1倍を超える計算となる。
 もし仮に、もっと上を狙うのであれば、第1回調査の倍率を0.9倍から1.0倍くらいまで上げる必要がある。
 そのためには、早期に(具体的には1学期に)、説明会や体験入学を実施すべきだが、今シーズン、1学期に説明会を実施したのは岩槻商業だけだった。
 ちなみに工業高校は1学期から積極的な学校が多い。
 早期始動は今後の課題だろう。

◆ホームページでの発信が弱い
 進路に関する情報が少ない。
 進路指導というメニューすらない学校がある。
 
 現状、進路情報がもっとも充実しているのは浦和商業と所沢商業で、指導方針や指導計画はもとより、就職実績は職種分類まで含めて過去4~5年分、大学等進学実績は学部学科や試験方法も含めて過去4~5年分掲載されている。
 すべての商業高校はこのレベルを目指してほしい。

 大学進学者が25%以上に達している学校もあるなど、いまや「商業高校=就職」の時代ではない。途中で進学に変わっても大丈夫、もしくは最初から進学でも大丈夫という情報を発信すべきだろう。

◆言葉が通じていない
 何を学ぶ学校か、どんな職業、仕事を目指す学校か。
 そのあたりの説明力が弱い。

 中学校や塾の先生方の中に商業高校出身者はきわめて少なく、学科内容などを説明できる人がほとんどいない。
 しかがって、高校側による説明がすべてである。

 たとえば、商業高校では必修である簿記について、それが何であるか、なぜ大事なのか、これが出来るとどんな仕事に就けるのかを中学生に分かりやすく説明している学校が少ない。
 会計だ、原価計算だ、マーケテイングだ、と言われても何のことやらさっぱり分からない。
 専門用語を並べるだけでは魅力は伝わらない。
 ぜひ考え直していただきたい。

 と、一部抜粋すれば、このような話。

◆商業高校の可能性
 多様性が言われる時代、農業・工業・商業といった専門高校は残さなければならない。施設設備面での投資や維持管理には膨大な資金が必要だが、生徒たちが卒業後、産業界の中核となって活躍してくれれば県全体としては元が取れることになる。

 商業高校はいま流行りのアントレプレナーシップと相性が良い。
 会社の仕組みやお金の流れや法律・規則が分かっていれば、あとはこれに自分の趣味や得意なことを組み合わせれば、これで起業となる。
 在学中に起業する生徒が出てきたら面白いと思う。