高校入試、それも埼玉県のことを多少知っているだけの私が、昨今話題の年内入試(大学入試)について語ってみる。
 「素人は黙ってろ」と言われるのは承知の上である。

 昨年度、首都圏では、東洋大学、大東文化大学などが学力テスト付きの年内入試を実施した。
 年内入試は、総合選抜型、学校推薦推薦型などと呼ばれ、以前から広く行われてきたが、学力試験を伴う入試形態は認められていなかった(少なくとも建前上は)。
 したがって、昨年も文部科学省は東洋大学などに止めるように厳重注意したのだが大学側はそれに従うことはなかった。
 それで、今年はどうなるかと注目されたが、結局、文部科学省は認める方向に転換した。現状を追認したわけだ。
 今度度は新たに昭和女子大学、立正大学、玉川大学、創価大学などが加わった。

◆一般入試の早期化(前倒し)が加速
 今や全国の私立大学入学者の6割は、総合型選抜や学校推薦型選抜により入学している。
 年明けの一般選抜で学力のある受験生を確保しているのは国公立大学や、首都圏で言えばMARCH以上レベルに限られている。
 つまり、年内入試はすでに大学入試の主戦場と言っていいような状況になってきているので、面接などで意欲を確かめるだけでなく、学力も確かめたくなるのは自然の成り行きというものだろう。

 東洋大学が成功を収めていることから、日東駒専レベル、大東亜帝国レベル、あるいはそれらと同等ないし、やや下のレベルの大学は来年度以降、追随することになるだろう。

 大学にとって、基礎学力を備えた層を確保できるメリットがある。ただ、年内入試で多くの合格者を出すほど、年明けの一般入試の募集枠は狭まる。また、ライバル校が次々に参入することになれば、これまでの一般入試における戦いが早期化されるだけとなるかもしれない。

 受験生は、一般入試の予行演習にもなるし、いわゆる滑り止めを早めに確保できれば、年明けの一般入試に余裕をもって臨むことができる。受験校もある程度絞れるので、親の経済的負担(受験料など)も軽減できる。
 ただし、試験時期が早まったことで、受援勉強への取り組みも早めなければならない。また、首尾よく年内入試で合格を手に入れられればいいが、万一失敗した場合、年明けの一般入試に向けて、気持ちを切り替えられるかという問題も発生する。

◆進路指導計画の見直しが必要
 各高校は、指導目標・方針の見直しを迫られるだろう。
 ほぼ全員が共通テストを受験するような高校や、ほとんどの生徒が早慶上理やG-MARCH以上を狙う高校であれば、年明けの一般入試をターゲットとした、これまで同様の指導で乗り切れそうだ。難関大学が今すぐに学力テスト付き年内入試に軸足を置くことは考えられないからだ。

 その逆に、これまでも指定校推薦なども含めた年内入試が中心だった学校も、基礎学力アップに早めに取り組むことで対応できそうだ。面接や小論や調査書だけでは入れんぞと、発破をかけやすくなるかもしれない。

 面倒なのは、年内入試組と一般入試組が混在するような学校だ。
 授業進度一つをとっても、どちらに合わせるかという問題が発生する。
 学校行事の時期なども見直しを迫られるだろう。

 私立の場合であれば、方針の維持であれ、転換であれ、一つの方向でまとまりやすいが、公立はトップも短期で交代するし、先生方の異動サイクルも短いので、方針が定まりにくいのではないかと心配だ。