早い学校は、そろそろ来期のパンフレット制作に向けて動き始めているだろう。
 そこで今日は、キャッチフレーズの話である。

 が、その前に、今般の衆院選にあたり、各政党が掲げたキャッチフレーズをみてみよう。

●自民党     日本列島を、強く豊かに。
●中道改革連合  生活者ファースト くらしを真ん中へ! 
●日本維新の会  動かすぞ、維新が。
●国民民主党   もっと手取りを増やす。
●共産党     くらし 平和 人権 国民のためにブレずにはたらく
●れいわ新選組  日本を守る、とはあなたを守ることから始まる。
●参政党     ひとりひとりが日本
●日本保守党   守ろう! 日本を。
●社民党     いまだから社民党
●チームみらい  未来のために。今できることを、今すぐに。

 各党の戦略的な立ち位置や「誰の方を向いて政治をしようとしているか」が色濃く反映されていてなかなか面白い。大政党は「包括的」にならざるを得ず、小政党は「エッジ」を効かせられるという特徴も見て取れる。

 自民党「日本列島を豊かに」、れいわ新選組「日本を守る、とはー」、参政党「ひとりひとりが日本」、日本保守党「守ろう!日本を。」など、「日本」を用いる政党が多いのが昨今の特徴か。
 日本維新の会が「動かすぞ、維新が。」と、「動かす」という動詞を強調し実行力をアピールしている。現役世代や比較的若い世代をターゲットにしている様子がうかがえる。国民民主党が「もっと手取りを増やす」と、こちらも明らかに現役世代に照準を合わせていることがわかる。昔、大政党だった社民党が「いまだから社民党」とこちらは往時を知る高齢層にその存在意義をアピールしている。
 幅広い支持を獲得しようと思えば、キャッチフレーズの抽象度が増していくのは避けられない。インパクトを高めれば、特定層の熱狂的な支持を集められるかもしれないが、逆に離れて行く層もある。どの程度の議席を狙い、どの層に訴えかけて行くか。各党の戦略が垣間見えて興味深い。

 と、ここまでは選挙の話で、ここから高校募集のキャッチフレーズの話に移って行く。

◆高校はエッジの利いたフレーズが使える
 政党のマーケティングと高校の募集戦略を比較すると、高校の方が圧倒的にターゲットを研ぎ澄ませやすい。よって、「尖った(エッジの利いた)」フレーズを用いることが可能だ。
 政党の場合「(多くの人々に)嫌われないこと」が重要だが、高校は、そこはあまり考えなくていい。特定層に嫌われてもいいから「定員分の熱狂的なファンを作ること」が重要なのだ。極端な話、浦和一女は男子中学生全員に嫌われてもまったく痛手とならない。

◆エッジの利かせ方、3パターン
 第一に考えられるのは「ベネフィット型」だ。ここに来たら、何ができる、何になれるなど享受できるであろうベネフィット(利益)を強烈にアピールするタイプだ。難関大学に行ける、部活で全国大会行ける、資格が取れるなど高校3年間で得られるベネフィットを鮮明にする。

 第二に考えられるのは「リセット型」だ。成績も良く、特に問題のないごく普通の中学生であっても、心のどこかに「今の自分を変えたい」という気持ちがあるだろう。そうした変身願望を突くようなキャッチは一定の効果はあるはずだ。

 第三に考えられるのは「居場所提示型」だ。「心理的安全性」を最優先する層は必ずあるので、そこに訴えかける作戦だ。たとえば、「そのままのあなたでいい」、「ここならきっと輝ける」といったたぐいだ。

◆ダブルターゲットの難しさ
 学校選びは最終的には受験生本人ということになるが、保護者の同意や納得も必要となるだろう。
 エッジを利かせ過ぎると、生徒本人には受けても、親の気持ちがつかめないかもしれない。入学後には保護者として何かと協力していただかなくてはならないということを考えると、やはり受験生本人だけでなく、親にも選んでもらいたい。
 となると、受験生本人の情緒に訴えると同時に、親の納得感も得なければならず、非常に難しい言葉選びとなってくるわけである。

 子供に響く言葉と、親に響く言葉はそもそも一致しないという前提に立ち、メインキャッチとサブキャッチの二刀流で乗り切るのも一つの考え方だ。

◆凡庸なキャッチよさようなら
 昨今の少子化においては、八方美人的な「凡庸なスローガン」、たとえば「夢をかなえる」「個性を伸ばす」などは、どの学校にも当てはまりすぎて結局はスルーされてしまう。
 「うちはこういう学校だ」、「うちの学校は、こういう子に来てほしい」、「こういう子には向かない」という意思表示をキャッチフレーズに込めた方が、マッチングの質が上がり、結果として志願倍率の向上と入学後の退学率低下に寄与するだろう。

 とりあえず、「夢」「未来」「個性」あたりは、手あかがつきすぎてインパクトが弱く、隣の学校と入れ替えても誰も気づかないので、これは廃止しよう。
 「夢」や「未来」が悪いというのではなく、キャッチコピーとしての効果が薄いということだ。何十万円もの費用をかけてパンフレットを作るのにもったいないではないか。そういうことだ。