令和9年度の埼玉県公立高校入試から、すべての高校で全受検生を対象とした面接が行われる。
受検生は出願時に「自己評価資料」を提出する。これは面接の基礎資料として使われるが、資料そのものが得点化されるわけではない。また、個人面接、集団面接のいずれであっても、冒頭に短いスピーチを行う。その名称が「マイボイス」である。
この、人生で初めて聞くであろう言葉に、恐れを抱いた中学生も少なくないだろう。面接があるというだけで腰が引けているところへ、さらに聞き慣れないカタカナ語が登場する。これでは公立高校を敬遠する受験生が増えてしまわないかと心配になる。
そこで、お節介ジジイの私は、中学生たちにこう説明している。
「マイボイス、早い話が、自己紹介」
だから、そんなに心配しなくていいよ。
「てめえ、余計なことを言うんじゃない」と怒られるかもしれない。しかし、入試制度というものは、複雑にすればするほど、細かな名称を増やせば増やすほど、志願者を遠ざける方向に働く。これは長年、高校入試を見てきた者の実感である。
◆「自分の言葉」って、どんな言葉
「最初に自己紹介をしてください。その中で、中学校生活で頑張ってきたことや、高校に入って頑張りたいことに触れてください」
これで十分ではないか。
が、そうではなく「自分の言葉で話してください」という注文である。
「ぶっちゃけ、中学時代は部活一本で、勉強はかなりおろそかになっていました。部活ではそこそこ結果を出せましたが、学力の方は正直ヤバいです。高校に入ったら、さすがにこれではマズイので、勉強にも部活動にもガチで取り組み、文武両道を目指したいです」
はい、これも立派な「自分の言葉」なんだが、これでいいはずがない。どこからか他人の言葉を借りてこなければ。
そもそも、「自分の言葉で」という言葉自体が、思い切り他人の言葉なのだが、それはさておき、中学生にとって「自分の言葉」と「他人の言葉」の違いは、実はかなり難しい。
私はこうして毎日記事を書き続けているのだが、「他人の言葉」じゃなく「自分の言葉」で書けと言われたら、間違いなく筆は鈍るだろう。
「自分の言葉で」とは、先生や保護者に教えられた模範回答を丸暗記して話すのではなく、自分が経験したことや考えたことを、そのまま話せばいいんだよということなんだろうが、中学生に理解してもらうのは難しい。
◆面接は暗記大会ではない
一つ気になることがある。面接には手ぶらで臨まなければならないのか。
たとえば、提出した自己評価資料の下書きや、話したい内容を簡単にまとめたメモを持ち込むことはできないのか。いざというときには、それを見てもよいという運用にはならないのか。
もちろん、手のひらにマジックでびっしり書いておくというのは、さすがにどうかと思う。しかし、面接は記憶力を試す試験ではない。メモを実際には見なかったとしても、「困ったら確認できる」と思うだけで、受検生はかなり安心できる。
それとも、何度も練習して、話す内容を完全に記憶することを求めるのか。そうなれば、面接は対話ではなく、暗記した原稿の再生大会になってしまう。
◆不安より希望を与える説明を
来週、中学生を相手に入試講演を行う。
受験生には、入試に向けてしっかり努力してほしい。しかし、人間は脅されても、なかなか前向きには努力できない。必要なのは恐怖ではなく希望であり、緊張ではなく心理的な安定である。
だから私は、こう伝えるつもりだ。
「なんだか難しそうな名前が付いているけれど、実際はそれほど恐ろしいものではない。自分が中学校で経験したことや、高校で頑張りたいことを、短く話せばいい。少しずつ準備すれば大丈夫だ。だから、あきらめずに頑張ってみよう」
来週の講演会はこちら。
令和8年度家庭教育合同研修会 変わる高校入試 今、受験生に求められるのは?
【追記】
昨日の「進学フェアに関する御礼メッセージ」に関する記事は大幅に加筆した。
「彩の国進学フェア終了 各校御礼メッセージを収集」

コメントを残す