今年もまた「彩の国進学フェア」の季節がやってきた。
 会場は、第1回目は大宮ソニックシティだったが、2回目以降は一貫してさいたまスーパーアリーナを使っている。
 ただ、今年はスーパーアリーナが改修工事のため使えず、やむを得ず大宮ソニックシティでの開催となった。

 埼玉県内私立は、「彩の国進学フェア」が始まる以前から、「私学フェア」というイベントを独自開催していた。これは今でも続いている。
 一方、公立高校は、自校で説明会を開催することはあっても外部イベントに参加することはなかった。公立高校が参加できるイベントがなかったのが主たる理由だが、公立高校たるもの民間企業が営利目的で開いているイベントに参加してよいものかという議論もあったからだ。しかし、民間企業ではあるが比較的公共性が高いとみなされている新聞社を主催者とし、さらに県教育委員会や私学協会の後援をとりつけることにより、公立参加への道を開いた。その結果、当時としてはおそらく日本初となる公私合同イベントが誕生した。(地域限定の小規模なものはあったかもしれないが、全県的レベルで公私合同は初めてだろう)
 
 さて、そんな歴史あるイベントであるが、そろそろ曲がり角に来ているのではないか。
 あるいは、その歴史的使命を終えたのではないかと、創設に関わった者として思うのである。
 少なくとも、その役割を変える時期には来ているだろう。

◆「一斉集客モデル」から「体験・個別化モデル」へ
 このフェアを今後も継続するのであれば、昭和・平成型の「一斉集客モデル」から、令和型の「比較・体験・個別化モデル」に変えて行く必要があるだろう。
 この転換は、外部合同イベントだけでなく、学校が独自実施するイベントにも求められる。

 これまでの進学フェアは「情報不足を一気に埋めるイベント」であった。
 しかし令和の受験生・保護者は、すでにネット、動画、SNS、などでかなりの事前情報を持っている。したがって、会場でパンフレットを集め、各校の説明を順番に聞くという形だけでは、価値が弱くなってきている。

 彩の国進学フェアを含むこれまでのフェアは、主催者側・学校側から見れば「出展校を集める」「ブースを並べる」「来場者をさばく」という運営発想だった。
 しかしマーケティング的に見たとき、受験生・保護者は単なる来場者ではなく、進路選択という不安の大きい意思決定を行う顧客である。この「来場者」と見るか、「顧客」と見るかという視点の問題はイベント設計において極めて重要である。学校の先生方は「顧客」という言い方に抵抗感があると思うが、マーケティング的には「顧客」と考えないと先に進めないし、妙案も浮かばない。

 一言で言えば、令和型にするならイベントの目的を「たくさんの学校を知る場」から、自分に合う学校を絞り込むための「体験設計の場」に変えることだろう。情報収集がメインのイベントではないということだ。

◆せっかく事前予約制にしているのだから
 コロナを機に、学校説明会を含むほとんどのイベントが事前予約制を採用している。
 だが、現在の事前予約制は、基本的には混雑管理のための仕組みである。また、来場者と見る発想である。
 これをマーケティング装置に変えるべきだ。

 たとえば予約時に、次のような簡単な項目を入力してもらう。(回答は必須ではなく任意であるのは当然だ)
 居住エリア、想定される通学時間、希望する学科・コース、部活動、大学進学志向、私立併願の有無、第一志望かどうか。さらに、不安に思っていること、悩んでいることはなにか、など。
 これをもとに、来場前に「おすすめ回遊ルート」を提示する。
 「まず公立普通科を2~3校見る(おすすめは〇高、△高)」「次に私立併願校を2校見る(おすすめは〇高)」といった具合だ。要するにナビゲーションなのだが、これを一件一件人力(マンパワー)で処理しなくていいのが令和の時代だ。

◆会場は「学校別ブース」+「課題別ゾーン」へ
 今の合同相談会は、基本的に学校ごとのブース配置だ。
 これは分かりやすさという点では優れているのだが、令和型ではこれに加え、「課題別ゾーン」を設ける。

 たとえば、今の埼玉県だったら「公立入試改革相談ゾーン」を設ける。
 「調査書対策相談ゾーン」
 「面接対策ゾーン」
 「自己評価資料相談ゾーン」
 「マークシート体験ゾーン」
 これらを出展者である学校任せにせず、主催者側が提供する。相談スタッフは協賛してくれている大手塾の皆さんにお願いすればいい。

 また、「専門高校ゾーン」のようなものがあってもいい。
 たとえば工業高校の電気科や機械科の説明だったら、川越工業の先生に聞こうが熊谷工業の先生に聞こうが同じことだろう。農業科や商業科なども同様だ。
 五十音順で散り散りになるより、みんな集まっていてくれれば、受験生・保護者も助かるだろう。
 私が担当するとしたら「部活で選ぶゾーン」かな。マイナー競技も含めて部活情報には結構詳しい。

 主催者として、来場者の安全について万全を期すのは当然のことで、そこに多くのエネルギーを割かなければならないのは承知している。
 だが、イベント全体の価値を高める工夫をしないと、「昔はすごかったイベント」になってしまう。

 続編あり。