新学期9月移行論。それ、今する話じゃないでしょう、以上。なのであるが、一応考えを述べておこう。
◆新学期9月移行論が出てくる理由
これは単に学校だけの問題ではなく、社会全体の相当大きなシステム変更であるから、十分な議論と準備期間、周知期間を設けるべきである。関連する法改正だけでも一体どれだけあるか私には想像もつかない。コンピュータシステムの変更やら書類書式の変更やら、とてつもない事務作業が発生するのは目に見えており、コロナ問題の先行きが見えない今、むしろ棚上げ、先送りすべきテーマである。
それを今、殊更にマスコミが取り上げようとするのは、いつも言っているように、学校や教育に関わるテーマは「食いつき」が良いからである。
◆9月新学期だったらコロナは入試を直撃
新学期を9月に移行すること自体に強く反対はしない。どっちでもいい。これからの時代を生きて行く若い世代が、その方が好都合と判断するならそれでいいではないか。4月新学期だって、長い議論と試行の末にそうなったわけではない。
何月始まりでも、それぞれに長所短所はある。10年20年経てば社会に定着するだろう。私はあの世からその様子を眺めていよう。
仮に現在、わが国が9月新学期というシステムで動いていたとしよう。
1学期9月~12月
(冬休み)
2学期1月~3月
(春休み)
3学期4月~7月
(夏休み=学年末休み)
こんな感じ。
卒業式・終業式は7月の行事となり、入試シーズンは6月から7月にかけてとなろう。しかし、2学期の終わりである3月から授業は行われていない。3学期はまだ始まっておらず、授業再開の見通しも立っていない。こんな状態で入試ができるのか。
新学期9月というシステム下であれば、われわれは今、インターハイとか高校野球のことなど眼中になく、入試のことを最も深刻な問題として議論しているはずだ。そして、いっそのこと新学期を昔のように4月に戻したらどうかという意見さえ出てきたかもしれない。
◆現段階における割と現実的なプラン
1学期はほぼ壊滅状態だが、夏から徐々に回復、秋には終息。希望的観測なのだが、仮定を置いてみないと考えが先に進まない。
なお、私のポジションはショートで守備範囲は高校入試である。セカンドが中学入試で、サードが大学入試とすれば、何とかなりそうなのは二遊間、三遊間までで、あとは守備範囲外だ。
●入試時期の延期
入試時期は可能な限り先送りする。ただ、これには限度がある。公立高校入試で言えば、神奈川県あたりが2月中に試験日程を終え、おそらくこれが日本一早いのであるが、全国的に見れば3月第1週から2週が多く、先送りが受験生にもたらすメリットは少ないだろう。
●入試出題範囲の縮小
高校入試の場合、通常は中1から中3の全範囲。大胆に言えば、これを中2までとする。あるいは3年前半の範囲まで。
学力検査と調査書(いわゆる内申)の比重に変更を加えるとか、試験教科を減らすとか、制度面に手をつける方法も考えられるが、周知に時間を要するし、新たな対策を求めることになる。未履修となる可能性の高い分野・単元は試験範囲に含めないという方法が分かりやすく、また受験生の負担軽減につながる。この決定はできるだけ早いほうがいい。
●数年かけて遅れを挽回
夏休み返上で頑張っても未履修や、法定時数不足と単位認定などの問題は発生する。形式面では法改正による特例措置を設ければいいだろう。オンラインでも授業時数にカウントできるとか、レポート提出で代替できるとかすればいい。乱暴な言い方をすれば「やったこと」にすればいいだけだ。
しかし、実際にはやっていない、あるいは十分にできていない。こちらの方が大問題だ。中1の残りは中2へ、中2の残りは中3へ、中3の残りは高1へと、次の学年に先送りする。そして、来年も再来年も夏休みを短縮したり、土曜授業を行ったりして、徐々に回復を図る。今の遅れ程度なら今年度中は無理だが来年度までの2年がかりで回復できるだろう。
◆平時の常識を捨てる
昨日、埼玉県・大野知事は、県立学校の5月末までの休校延長を要請した。
これは想定内。連休前の発表で良かった。
決める。変更する。また決める。また変更する。
本来なら、二転三転、変更に次ぐ変更は許されるものではないが、それは平時の常識だ。世の中全体が未知の体験をしているのであるから、後出しじゃんけん的に見通しの甘さを責めても始まらない。結果が出てからあれこれ批評するのはワイドショーやタレントに任せておこう。彼らも彼らなりに仕事をしているのだ。
その時その時、最善と思われる選択肢を選び、勇気をもって実行に移して行こう。「しまった!」と思ったら、やり直せばいい。
最後に、恒例の高齢者からの一言。
今まで、取り返せなかった失敗はなかったよ。
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