令和9年度埼玉県高校入試にかかる第1回進路希望状況調査の発表を受け、先週は何本か関連記事を書いた。
一昨日(10月31日)に書いた男女別学校の倍率に関する記事は、予想を超えて多くの方に読んでいただき、3万PVに迫る勢いととなっている。本来、このブログは学校や塾の先生方を主な読者として想定しているが、どうやら受験生・保護者の皆さんにも読まれているようだ。
むろん、それはそれで結構なことだが、ここでは基本的に、受験生の立場からではなく、生徒を募集する学校側の立場から数字を眺めていく。
今日は、具体的な対策を考える前に、第1回進路希望調査という市場データの性格について整理しておきたい。
◆埼玉の調査時期は早い
以前、このブログで書いたが、進路希望調査の実施回数や時期は都県によって異なる。
東京・神奈川・千葉は年1回。一方、群馬・栃木は年2回。茨城では現在、県教委による同種の調査結果は確認できない。
埼玉県は首都圏の一角だが、年2回という点では北関東型である。
もっとも、高校入試制度そのものが都道府県ごとに異なり、調査もそれぞれの入試日程や進路指導計画に合わせて実施されるものだから、回数や時期だけを単純比較してもあまり意味がない。
埼玉県の場合、第1回進路希望調査は10月1日現在となっている。
しかし、県内すべての中学校が10月1日に一斉に生徒の希望を調べているわけではない。
各中学校はそれぞれの進路指導計画に基づいて希望調査を行い、その結果を集約している。
したがって、実際に生徒が希望を回答した時期は学校によって異なる。中には夏休み明けの比較的早い段階で回答している生徒もいるだろう。
要するに、10月1日現在の調査とはいえ、そこには9月段階の受験生の意識も反映されているのである。
◆「不動」と「浮動」が混在する
この時期の受験生は、志望校に対する気持ちが必ずしも固まっていない。
まだ学校説明会に十分参加していない生徒もいれば、複数の学校を比較検討している生徒もいる。
成績や偏差値、通学時間などを考え、とりあえず一校の名前を書いたという生徒もいるだろう。
一方、早い段階から高校について調べ、学校説明会や文化祭にも足を運び、すでに志望校をほぼ決めている生徒もいる。
つまり、同じ希望者であっても、その希望の確かさには大きな違いがある。
私はこれを「不動」と「浮動」の混在と呼んでいる。
「不動」とは、志望校に対する意思が固く、多少の倍率変動や周囲の意見では容易に動かない生徒である。
一方の「浮動」は、現時点ではその学校を希望しているものの、今後の情報収集や成績の変化、倍率などによって志望校を変更する可能性がある生徒である。
念のため断っておくが、これは受験生の優劣を表すものではない。
早く決めたから偉いわけでも、まだ迷っているから悪いわけでもない。
あくまでも、現段階における志望の確かさの違いである。
◆同じ希望者300人でも中身は違う
ここから学校広報・生徒募集の話になる。
仮に、A高校とB高校の第1回調査の希望者が、ともに300人だったとしよう。
数字だけ見れば、両校の人気は同じように見える。
しかし、A高校の希望者300人のうち、かなりの割合が「不動」であるのに対し、B高校では「浮動」の割合が高いとしたらどうだろう。
今後の希望者数の推移は、かなり違ったものになる可能性がある。
A高校は比較的安定して推移するかもしれない。
一方、B高校は倍率発表や学校説明会、三者面談などを経て、希望者数が大きく変動する可能性がある。
つまり、同じ希望者300人であっても、その中身は同じではないのである。
第1回調査の希望者数や倍率は、その学校が現時点でどの程度選ばれているかを示す数字ではある。
しかし、その300人がどの程度の確信を持って学校を選んでいるかまでは教えてくれない。
ここに第1回調査の読み方の難しさがある。
◆「浮動」は流出だけではない
さらに、もう一つ重要なことがある。
浮動層というと、現在自校を希望しているが、今後他校へ移ってしまう可能性がある生徒を想像しがちだ。
しかし、当然ながらそれだけではない。
10月段階では他校を希望していても、その後、自校に希望を変更してくる生徒もいる。
つまり、学校側から見た浮動層には二つの方向がある。
一つは、自校から他校へ向かう可能性のある層。
もう一つは、他校から自校へ向かってくる可能性のある層である。
この両方を見なければ、市場の全体像を正しく捉えることはできない。
希望倍率が高い学校でも、その多くが浮動層であれば安心はできない。
反対に、現時点で定員割れしている学校でも、今後の流入が期待できるなら、悲観する必要はない。
そのあたりは過去データなどを使って、冷静に判断する必要がある。
◆過去の希望者推移に手掛かりがある
では、自校の希望者のうち、どの程度が「不動」で、どの程度が「浮動」なのか。
残念ながら、第1回調査の結果だけでは分からない。
しかし、手掛かりはある。
それが、過去の第1回希望者数と実際の出願者数の関係である。
私は以前から、第1回調査の希望者数を100として、最終的な出願者数がどの程度増減するかを指数化し、「志望推移指数」と呼んでいる。
これを見ると、学校ごとにかなり特徴的な動きが確認できる。
10月の希望者数と出願者数がほぼ同じ学校もあれば、出願時には大幅に減少する学校もある。
逆に、10月段階では希望者が少なくても、その後増えていく学校もある。
もちろん、希望者が減ったからといって、全員が浮動層だったと決めつけることはできない。
また、10月に希望していなかった生徒が新たに加わることもあるので、実際の流出入は単純な差し引きでは分からない。
それでも、過去数年間の推移を調べれば、自校の希望者がどの程度変動しやすいかについて、一定の傾向をつかむことはできる。
これは学校側が第1回調査の数字を分析する際、ぜひ加えてほしい視点である。
◆まずは市場の性格を知る
第1回進路希望調査の結果を見て、高倍率に安堵する学校もあれば、定員割れに悲観する学校もあるだろう。
しかし、10月の希望者数は、そのまま出願者数になるわけではない。
そこには「不動」と「浮動」が混在している。
しかも、その構成割合は学校によって異なる。
したがって、倍率の高低だけを見て一喜一憂しても、今後の見通しを正しく立てることはできない。
まず、自校の希望者数がどのような性格を持っているのかを考える必要がある。
それを踏まえて初めて、11月以降の学校説明会や情報発信をどうするかという具体的な戦略が見えてくる。
市場分析の目的は、次の行動を決めることである。
では、「不動」と「浮動」の混在する市場に対し、学校はどのような働きかけを行えばよいのか。
そのあたりは、明日以降、具体的に考えてみたい。

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