「正解のない時代と言われますが、では、そんな時代を生きて行く子供たちに、どんな教育をするのが正解なのでしょうか?」
だから、正解がないって言ってるでしょうが。
これからは正解のない時代。と言うことは、今までは正解のある時代だったわけだ。
そう言えば今から半世紀前、私が高校生だった頃このように教わった。
今、電子計算機というものが注目されている。見たことはないと思うが、恐ろしく計算スピードが速く記憶力もすごい。そのうち全ての機械は電子計算機によって制御されるようになるだろう。今はビル1棟分ぐらいの大きさだが、やがて超小型化され人々がカバンに入れて持ち運ぶ時代がやって来るだろう。つまり記憶力なんて何の意味も持たない時代になるんだ。いいか、これが正解だ。
ああ、しかし何ということだろう。正解を聞き逃した私は英語も国語も世界史も日本史も、思いっきり暗記してしまった。数学さえも解法パターンを暗記してしまった。くそ、今さら忘れても手遅れだ。
また、このようにも教わった。
長寿の時代がやって来るだろう。いま男性の平均寿命は67歳くらいだが、キミたちがその年齢に達する頃には80歳を超えているだろう。その一方で、生まれてくる子供の数は激減し、年寄りばかりの世の中になるのだ。老後はなくなり、死ぬまで働く時代になるのだ。孫の面倒をみながら年金暮しなど夢のまた夢だ。いいか、これが正解だ。
ああ、しかし何ということだろう。正解を聞き逃した私は60歳までの人生設計しかしてこなかった。くそ、今さら気づいても手遅れだ。
でもまあ、正解のある時代に正解を見つけられなかったのは自己責任だから仕方ないとして、これからは正解がない時代だという。
正解(仮)。
せめてこれくらいは認めて欲しいが、正解はないと断定されているからこれもダメなんだろう。面倒な時代になったものだ。
冒頭の質問。「正解のない時代を生きる子供たちへの教育は?」に対する私の回答は、そうだな、無理に答えを出そうとしない子供に育てることかな。正解も正解(仮)もないんだから考えるだけ無駄だ。
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