公(おおやけ)のサービスは無料、私(わたくし)のサービスは有料。何となくそう思っており、世の中だいたいにおいてその通りなのだが、テレビはNHKが有料で民放が無料となっている。
 もっとも、民放にはスポンサーがついており、スポンサーはCM料金を広告宣伝費として自社の商品価格に上乗せしているから、丸っきりタダとは言えないのかもしれないが、少なくともテレビを見ることに関してはタダである。

 NHKから国民を守る党(通称「N国党」)が話題になっている。N国党はスクランブル放送(見たい人だけ料金を払う制度)の実現を掲げる政党で、先の参議院選挙において1議席を獲得した。
 245分の1の政党が、ここまで世間から注目されるのは、立花孝志代表の個性とマスコミ戦略の巧みさにある。

 一種の炎上商法(炎上マーケティング)である。プロレスを見るようでもある
 過激な発言と行動で人々の関心を集め知名度を高める。年内にも実施されるかもしれない衆議院選挙を見据えたものだろう。
 悪名は無名に勝るということか。
 
 マツコ・デラックスを追い詰めるやり方には流石にやり過ぎではないかの声が上がっているが、高須院長やダルビッシュのような著名人がツイッターで取り上げてくれること自体がN国党にとって宣伝になるのだ。
 まんまと作戦に嵌ったな。
 いや、違う。
 フォロアーやチャンネル登録者を増やすために今はこの話題に乗っておくのが得策と考えているだけだ。お互い様だ。持ちつ持たれつというやつだ。

 N国党及び立花孝志代表は当分の間、燃料を投下し続けるだろう。周りから風を送り続ける人もいるだろう。これが衆議院選挙まで続けばN国党の勝ち。途中で鎮火すれば負け。

 立花孝志代表は、小池百合子知事が誕生した2016年都知事選にも立候補しているが、ほとんど話題にならず、わずか27,241票(得票率0.42%)で落選した。
 立花氏選挙歴。
 2013年 大阪・摂津市議会 落選
 2014年 東京・町田市議会 落選
 2015年 千葉・船橋市議会 当選
 2016年 東京・都知事   落選
 2017年 大阪・茨木市議会 落選
 2017年 東京・都議会 落選
 2017年 東京・葛飾区議会 当選
 2019年 大阪・堺市長 落選
 2019年 参議院比例区 当選
 ここまで3勝6敗。

 この間、YouTubeで盛んに情報発信してきたし、今も連日発信している。初立候補から6年目の参議院議員当選には、YouTubeが大きく関与したのは間違いないだろう。
 テレビは今もって最強のメディアであると思うが、YouTube恐るべし、である。

 YouTubeやSNSが一過性のものとは考えられないので、広報や広告に関わる者は、改めてその活用について考えてみなければならないだろう。
 また同時に、立花氏の活動が選挙というリアルな活動と結びついている点も見逃してはならない。