防災の日である。1923年(大正12年)のこの日、関東大震災が起こった。死者は10万人以上。死者数という点では広島原爆よりは少ないが、長崎原爆を上回る。戦争被害と自然災害を一緒するのはどうかと思うが、とにかく歴史的な大災害だったのである。

 防災の日は1960年に制定されたというが、私の子供のころの記憶では、この日を「震災記念日」と呼ぶ人の方が多かった。両親や周りの大人はそう言っていたし、学校の先生からもそのように教わった。
 
 昔は、震災記念日、終戦記念日、原爆記念日と普通に言っていたが、今は多くの人が記念日はお祝いする日であると考えているようで、ネガティブな事柄の場合は記念日は使われなくなったようだ。

 関東大震災は、今から96年前であるから私の親の世代にとってさえ生まれる前の出来事である。あまりにも遠い昔の話だ。
 防災について改めて考え、防災意識を高める日としては、東日本大震災のあった3月11日の方がいいのではないかという意見も聞かれる。
 たしかに関東大震災を知る人がほとんどいなくなってしまった今日、多くの人の記憶に刻まれている3月11日を防災の日とするのも一案だろう。

 私も一時、「3月11日防災の日」案に傾いたが、今はこれまでどおり9月1日がふさわしいと考えている。
 3月11日は、防災の日であろうがなかろうが、人々は地震や津波について考える日であり続けるだろう。忘れてはいけないのは、あるいは思い出さなければいけないのは、むしろ首都東京で起きた関東大震災の方である。
 防災の日が9月1日であるのは、この時期が台風襲来のシーズンであることも関係しているという。

 「天災は忘れたころにやってくる」とは物理学者・寺田寅彦の言葉。と言われている。
 人々が忘れてしまわないように、この日は新聞もテレビも、これでもかと防災に関する記事を書き、番組を放送すべきなのだが、残念ながらそのようにはなっていない。