埼玉県私立高校の入試について語るが、本日は主に公立高校の先生を意識した内容となっている。
 私立の先生や、塾の先生にとっては、当たり前すぎてつまらないと思う。

◆市場全体を見ているか
 公立高校の先生は、私立が視野に入っていない。
 むろん全然考えていないということはないが、考えが浅い。
 私立が視野に入っていないことの一番の証拠は、1月の私立入試当日に説明会を設定したりすることだ。

 埼玉県内私立は1月22日から24日にかけて集中的に入試を行う。
 昨年は6万3千人が受験した。
 一人で複数校ないし同一校複数回というケースがあったり、県外からの受験生もいたりするが、これだけの中学生が試験を受けるのが、この時期だ。
 (ちなみに埼玉県公立全日制受検者は昨年の場合、約4万人だった。正確には3万9877人)

 令和5年度の埼玉県内と一部都内私立の入試は1月22日(日)から行われる。
 この1月22日という日付は、私立協会の申し合わせによる入試解禁日で、私の知る限り、20年前から変わっていない。
 こういうのが頭に入っていないから、本番前日の21日(土)に説明会を設定してしまう。
 私立高校への配慮は無用だが、受験生に配慮しろよと思う。
 もっとも、私立を受けない生徒を狙い撃ちしているなら話は別だ。

 年間の説明会日程を決める際に、自校の行事や学習計画が優先されるのは仕方ない。
 しかし、中学生にだっていろいろ事情があるのだ。
 高校と同じように、定期考査もあるし、学校行事もある。
 3年生になったら校外模試も受けなければならない。
 そういう中学生の1年間というものに思いを致せば、ももちょっと別の考え方も出てくるはずだ。

 では、説教はこの程度にして本題に入る。

◆私立入試における単願
 県内私立入試では、単願と併願という二つの試験種別があることはご存知だろう。
 単願は、文字通り単一の学校しか志願しないのであるから、これらに志願した生徒は公立は受験しないことになる。
 前年(令和4年度)は、県内47校で合計約1万人が単願を志望した。

【県内私立全47校】
 単願志願者  1万773人
 単願合格者  9984人
 入学手続者  9885人
 単願合格率  92.7%
 ※なお、この数字(以下も同じ)は、3月の段階で私立中高協会や県学事課がまとめたものであり、最終結果とは多少の誤差があると考えられる。

 多くの方は、単願は確実に合格を保障された制度と考えているだろう。
 概ねその理解でよろしい。
 だが、単願でも相当数の不合格者を出している学校がある。
 慶応志木、早大本庄が典型だ。
 これに立教新座を加えた3校は、他の県内私立と異なり、いわゆる「ガチな入試」を行っている。
 そこで、この3校を除いたデータで見てみる。

【早慶立除く44校】
 単願志願者 1万242人
 単願合格者 9745人
 入学手続者 9648人
 単願合格率 95.1%

 以上のように、単願合格率は全体では92.7%であるが、早慶立3校を除いた44校では95.1%の高率となる。 
 県内私立では開智が「単願でも落ちる入試」となっているが、数字は後で示す。

◆県内私立における併願
 私立入試の併願で、主に想定されているのが公立との併願であるが、他の私立との併願というケースもある。
 単願と同様、数字を見てみよう。

【県内私立全47校】
 併願志願者 5万2230人
 併願合格者 4万4637人
 入学手続者  5744人
 併願合格率 85.5%

 ここでも早慶立を除いた数字を見てみる。
【早慶立除く44校】
 併願志願者 4万6642人
 併願合格者 4万2815人
 入学手続者  5299人
 併願合格率 91.8%

 単願ほどではないが、併願も合格率がかなり高い制度であることが分かるだろう。
 これは、皆さんよくご存じの通り、いわゆる「確約」が機能しているためである。

 なお、ここで一つ記憶にとどめておいてもらいたいのは、単願入学者と併願入学者の数である。
【県内私立の入学手続者】
 私立入学手続き者 1万5629人
 単願による入学者 9885人(63.2%)
 併願による入学者 5744人(36.8%) 
 ※入学手続者の中に、併設中学校からの内部進学は含まれていない。

 前述のように、単願は公立を受検しないことにした受験生である。
 これが増えると、公立志願者がその分、減少する。
 私立は、早く決めたい受験生に対し、単願での受験を勧める。
 公立第一希望で併願を希望している受験生に対しても、場合によっては単願への切り替えを勧める。

 令和4年度入試で見ると、第1回進路希望調査の段階では4万3274人いた公立全日制希望者が、第2回調査では4万1102人に減り、最終的に公立を受検したのは3万9877人だった。
 第1回と実際の受検者の差は3397人だ。
 第2回の調査結果が出る年明けでは私立出願に間に合わないので、10月から12月にかけて「公立希望→私立単願希望」という動きがあったことが分かる。

 まだ続きがあるが、予定があるため明日以降とする。