伊奈町にある日本薬科大学に行ってきた。
 ふだん中学や高校にしか行かない私がなぜ大学へ?
 そう思われる方も多いと思うが、きっかけがあった。
 読者の皆さんもご記憶にあるかもしれないが、本ブログのこの記事だ。

 これは上手い、連携協定による大学の知名度アップ作戦(11月25日)

 この記事はただネットで調べて書いただけなので直接取材したいと思っていたところ、運よくその機会をいただくことができた。
 そりゃあ行くよ。
 しかも、超多忙な都築稔副学長が時間を割いてくれるとあれば、自称・教育ジャーナリストの私は飛んで行くに決まってる。
 (実際は車で行ったが、ニューシャトル「志久駅」から近いので電車が正解だったかもしれない)

◆サントリーを寿退社
 大学や連携協定のこともだが、私はまず都築稔副学長に興味を持った。
 サントリー営業マンからの転身ということだ。
 ネットで調べればすぐに出てくることなので差し支えないと思うが、学園理事長の次女とのご結婚が転職のきっかけだという。
 ご本人曰く「酒を売っていましたが寿退社しました」
 ほほう、この人なかなか面白いこと言うな。

 元・広告業界の私はすぐにこのジョークを理解した。
 ご存知の方も多いと思うが、サントリーの前身は「寿屋」という。
 ちなみに「寿屋」の宣伝部と言えば、広告業界では伝説となっており、ちょっとでも広告宣伝を齧った者なら誰もが知っている。
 開高健や山口瞳も「寿屋」宣伝部の出身だ。

 スポーツマンでもある。
 今朝も陸上部の学生たちと走ってきたという。
 ちょっと待て。
 日本薬科大学陸上部と言えば、箱根駅伝予選会で16位に入った強豪ではないか(10位までが本選出場)。
 その学生と一緒に走るとは、只者ではない。
 一般人は、彼らのジョッグについていくことさえ至難なのだ。
 自称・市民ランナーの私にはよく分かる。

 副学長の職にありながら、学生にも教えている。
 東京大学農学部、同大学院修士修了の農学博士。

 と、副学長個人のことを最初に書いたのは、ここに答えの一つがあると思ったからだ。
 短期間のうちに多くの地域(自治体、大学・高校、企業など)との連携協定を締結した背景には、副学長の傑出した行動力があるのは間違いないだろう。

 この行動力を見習いたいものだが、残念ながら老齢となった私にもはやその力は残っていない。
 若い世代に期待しよう。
 中学・高校関係者の皆さん、ただ待っていたのでは良い話は舞い込んで来ませんよ。

◆探究に欠かせない外部との協力
 新しく始まった「総合的な探究の時間」。
 これ、本気でやろうとしたら、学校や先生だけでは手に負えない。
 中には適当にお茶を濁している学校もあるかもしれないが、深化させようと思ったら、大学や企業など外部の力を借りたほうがいい。
 それが連携協定という形になるかどうか別として、協力関係は不可欠だろう。
 
 今、多くの大学が協力的と言えるが、大学当局と教員との間に認識のズレがあるケースも多いという。
 このあたりは中学高校も一緒だ。

◆地域を巻き込む
 今回数多くの連携事例について聞くことができたが、中でも私がもっとも興味を持ったのは、地域を巻き込んだ形の連携だ。
 当面の学生募集だけを当て込んだものであれば、地域は不要だ。
 出張授業などで受験生への知名度を上げ、指定校にでもすれば済む話だ。

 大学運営と地域の活性化。
 長期視点で考えた場合、この二つには密接な関係がある。
 だからまず、地域を元気にすること。
 就業場所を作り、人口を増やすこと。
 まあ、本来なら行政が考えるべきことなのだが、それを後押しすることで大学の10年後、20年後に備える。

 相次ぐ連携協定の裏にはこのような長期戦略があるのだろうと理解した。
 広報活動とは本来、このような中長期視点に立った継続的な活動のことを言う。
 すぐに結果が出なくてもいい。
 中には失敗もある。
 そういう覚悟が必要なのだと改めて思い知らされた。

 お土産にこれを貰った。
 日本薬科大学×花咲徳栄高校×加須市×コロンバンによる連携商品。