埼玉県のICT教育の実情について考えてみる。まあ、いつものように統計情報をサクサクっと拾い読みしての話だから、深さはない。
 「学校における教育の情報化の実態に関する調査」(文部科学省)というものがあり、その中の分かりやすい統計として、「教育用コンピュータ1台あたりの児童生徒数」がある。
 
 埼玉県は「7.5人/台」で何と全国45位。辛うじて前回最下位から脱したが残念な結果だ。埼玉県ガンバレ。
 なお全国平均は「5.4人/台」、トップは佐賀県で「1.8人/台」。
 
 コンピュータ台数は少ないのであるが、明るい材料もある。同じ調査で教員のICT活用指導力を調べているが、その結果は次のとおりだ。
 「教材研究・指導の準備・評価・校務にICTを活用する能力」全国15位
 「授業にICTを活用して指導する能力」全国13位
 「児童生徒のICT活用を指導する能力」全国16位
 「情報活用の基盤となる知識や態度について指導する能力」全国15位
 アンケート式の自己評価であるが、埼玉県の先生方は、結構いい線行っている。

 まとめると。
 埼玉県では、先生方はICT教育についての能力をまあまあ身に付けているが、コンピュータの数が絶望的に少ない。

 実は今日、例の「小中学生にコンピュータ1人1台政策」について語ろうと思い、調べているうちに、たまたま総務省統計局のデータから文科省の実態調査に行き着いたのである。

 すでに書いたが、私は「1人1台政策」は「教育政策」よりも「産業経済政策」ではないかと疑っている。設置にかかる費用4000億円と、全国の児童生徒数から割り出すと、1台5万円程度と考えられる。
 そうか。となるとグーグルのクロームブックだな。今のパソコン業界は家庭に個人用パソコンを売り込むことにはあまり熱心ではなく、むしろ教育市場を有望な市場ととらえていて、この市場ではクロームブックとMACが激しく争っている。どっちも米国だ。確たる証拠はないが、この政策は経済産業省が強力にプッシュしているような気がしてならない。

 純粋に「教育政策」として考えるなら、4000億円はまず教える側の先生たちの環境整備や技能向上に当てたほうがいい。
 30年前、私が現役教員だったときのことだが、突然頼みもしないのに国の費用でパソコン40台がドーンと送られてきた。で、仕方なく急きょコンピュータ室を作った。しかし、誰も使わなかった、と言うか使えなかった。何とか使ってくれないか、そうじゃないと活用状況を報告できないからと校長に頼まれた私は、今はなき必修クラブにパソコン部を作り、にわか勉強で生徒に使わせた。30年前だから、マウスもなく、いちいちコマンド打ち込まなきゃ動かない面倒なやつだった。

 という具合で、ドカンとハード(機械)を設置するやり方はその後も続いたが、持ち腐れに終わってきたのが過去の経験だ。
 だが、4000億円を先生の研修に充てたのでは政治家も企業も喜ばないから、またぞろハード優先となりそうだ。