年寄りの意見は参考にならん。
 今日もまた大学入試の話である。年寄りの意見は参考にならないというなら、お前が言うなとなるのが道理だが、死ぬ前に一言ぐらい言わせてもらってもいいだろう。

 私の世代は、「共通一次」(1979~1989)というものを受験生としては経験していない。当然ながら「センター試験」(1990~現在)も、である。
 ざっくり言えば、こんな感じ。
 40代以下 「センター試験」世代
 50代   「共通一次」世代
 60代以上  どっちも未経験世代
 というわけだから、制度設計練り直しの作業は、50代以下に任せよう。言いたいことの第一はこれ。

 その上で、感想めいたことを言っておくと、やれ記述だ、やれ思考力・判断力・表現力だと言っている皆さん。最近のセンター試験問題見たことあります? もちろん学校や塾・予備校の先生は除いてだけど。
 もしかして、鉛筆転がして適当にマークすれば正解出来ちゃうようなチョロい試験だと思ってませんか?

 私は教員を辞めて以後も、取り敢えず専門の社会科だけは老化防止のために見ているが、良く練られたいい問題だと思う。私にこの作問力はない(当たり前か)。
 論述がないので表現力には疑問符が付くが、思考力・判断力は十分に問える。つまり、この度の改革は、なかなか良い問題であったセンター試験の、さらにその上を行こうという、ハードルの高い改革であったと思うのだが、そういう自覚ありました?

 それと、言うまでもなく国公立二次試験には論述問題がふんだんに盛り込まれていて、中には、ほぼ論文試験と言っていいような大学もある。
 だから、私などは、一次試験的な意味合いのある「共通テスト」に無理矢理記述を入れなくてもいいのでは、と考えてしまうのだが、そこは分かってます?

 ただ、ここで考えなくてはならないのは私大入試だ。ごく一部の大学・学部を除けば、記述・論述はゼロと言っていい。改革するならこっちだ。圧倒的に受験者が多い私大入試の方だ。
 と言って、私立入試のやり方に国がいちいち口出しをすることはできない。
 が、幸いに、と言うべきか、都内だけでも100を超える大学が「センター試験」を利用した試験区分を設けている。その場合、「センター試験」の結果のみで合否を決め、独自試験を行わないことも多い。であれば、ここを変えてやればいい。そうすれば私大受験者(一部ではあるが)も否応なく記述・論述試験を受けざるを得なくなる。もしかして、この改革は私大受験者向け? それも中レベル以下の私大受験生向け?

 記述問題で大騒ぎになるのは、採点の公平性の部分であって、問題そのものは実に簡単だ。私は以前、下手したら中学生でも解けると書いた。別に対策なんて要らんだろうと思えるような楽勝問題だ。国語なんか、これのどこが思考力・判断力・表現力なんだよと笑ってしまうくらいで、そういう意味では爆笑問題。

 「新大学入試、試行テスト国語記述問題は高校入試レベル」(旧ブログ:2018.11.13)

 読者諸氏は先生が多いだろうから当然ながら試行問題にも目を通されていると思うが、新聞記者や評論家、コメンテーターの人達は、たぶん見ていない。それで記事を書いたり、コメントしたりしている。そして困ったことに、かれらの社会的影響力は、私の数百倍、数千倍はある。
 頼むから、「センター試験」や「共通テスト・試行問題」のほんの一部でいいから、チラッと見て、それで書いたり喋ったりしてくれ。読者や視聴者をミスリードしないでくれ。そうじゃないと、数年後にまた同じ繰り返しをすることになる。