よし、来シーズンから厚底にしてみるか。むろんランニングシューズの話だ。なぜ今すぐじゃないかと言うと、春先から夏にかけて練習し、秋のレースからとなるので、来シーズンから。シーズン途中からの変更には自信がない。

 厚底は昔からあった。ただソールに厚みがある分、重かった。
 初心者のうちはそれでもいいが、私も記録が伸び始めてからはひたすら軽さを求めた。ただ、薄底は衝撃がもろに足腰にきた。厚さと軽さを兼ね備えてシューズはなかったのだ。

 そこに現れたのがナイキの厚底シューズ。
 厚みがあって足への負担が軽減され、かつ反発力があり、それでいて超軽量、お値段もまあまあ手の届く範囲とくれば、そりゃ履きたくなるわな。
 40年前に開発して欲しかったよ。

 競技力の向上は技術の進歩と共にあった。
 昔は棒高跳びだって竹のポールで跳んでたんだからね。戦前、大江選手や西田選手がオリンピックでメダルを獲ったころは4m20㎝か30㎝あたりで争っていたんだ。今なら普通に中学生が跳ぶ高さだ。ちなみに棒高跳びという競技は、ポールの長さや重さ、材質に決まりがないみたいだ。
 陸上のトラックだって、反発力のある素材にかわってるだろう。それで記録も伸びた。
 ドーピングみたいに人体に悪影響があるものはまずいが、シューズぐらいでガタガタ言うな。
 こういう技術の向上が、お年寄りでもスタスタ歩ける靴の開発につながるかもしれないじゃないか。それに、みんなが使い始めれば結局速いやつが勝つわけだから、何の問題もない。

 私はそこそこ長く生きているので、色んな経験をしてきたが、電卓が現れたときには、算盤の方が早いと言い張ってた人がいたよ。ワープロ(古いね)が出たときは、手書きの方が味があると見向きもしない人がいたよ。

 とりあえず試してみて、これだったらまだ昔のやり方のほうがいいねとか、あるいは、こういう作業には向いているけど、こういう作業には向かないね、というなら分かる。でも、試してもみないで従来どおりのやり方に固執するのは感心しないな。

 おっ、新しいの出たか。ちょいと試してみるか。
 こういうおっちょこちょいな人間が、知らず知らずのうちに技術の進歩に貢献しているのだ。
 新しいものに対して常に否定的で消極的な皆さん。別に古いものが全部だめだとか、即刻捨て去れと言っているわけじゃないですよ。だからここはひとつ、技術の進歩のためだ、世の中の発展のためだと理由付けして、新しいものに手を出してください。ダメなら元に戻せばいいだけなんだから。