これからの時代は、正解のない問いに答えられる人間にならなくてはいけない。
 と、日ごろ生徒たちに諭している先生方。
 はい、いま正に出題されていますね。腕の見せどころです。

 今までなかった新型コロナウィルスによる感染症の拡大、止まることを知らない中止ドミノ、異例の全国一斉休校。単品で見るとこれまでにも似たような事例はあったかもしれないが、セットでは初めて。
 みんなが初めての経験をしている。

 政府や地方行政を何やかやと批判している人もいるが、そういう人はそれがお仕事なのだと思っていればいい。誰かが出した答えを、それは〇、それは×と、個人の価値観で採点する。それがお仕事。
 そう言う私もほぼ同類で、何を言おうと何を書こうと、結果について一切責任を持たないお気楽な商売だ。

 しかし、先生方はそうはいかない。前例のない事態に直面し、何が正解か分からない中で、次々と答えを出していかなければならない。無答(白紙解答)は許されないのだ
 自己採点は後にしよう。
 ましてや他人や他校の出した答えを論評している場合ではない。
 とにかく今は、答えを出し続けるしかない。

 社会実験という用語がある。新たな制度や政策を導入するにあたって、場所や期間を限定して試行してみることだが、今回の新型コロナウィルスをめぐる一件は、期せずして始まった壮大な社会実験と見ることができる。
 今まで、やらなければとか、やりたいと思っていながら、さまざまな制約があったり、想定されるマイナスを恐れたりしてできなかったことがある。しかし今、望んだ形ではないにしろ、やらざるを得ない場面が設定された。

 組織やシステムの脆弱性があぶり出され、それらを改善、解決する機会が訪れた。
 そう思うことにしよう。「早くこの騒ぎが収束しないかな」などと、他人事のように言っていないで、自らの答えをだそう。その答えを実行に移そう。
 そうすれば、この困難な時期を乗り越えた後、組織としての学校も、個人としての先生も、一つ上のステージに立っていることだろう。

 未曾有の事態に直面し、誰もが正解の分からない問いを突き付けられた中で、先生たちはかく考え、かく行動した。と、後日、子供たちに堂々と言ってやろうじゃないか。
 生きた教材とはこのことだ。先生ガンバレ!