私はTwitterで高校の文化祭実行委員会をいくつかフォローしているのだが、浦高祭実行委員会とか一女祭実行委員会あたりからは中止のお知らせが入っている。
 9月初旬の開催ということは夏休みが準備期間になるわけだが、今年は夏休み短縮で十分な準備時間が取れない。また、新型コロナが完全終息したとは言えない現状であるから、不特定多数が来場する文化祭は感染防止策が取りにくい。授業時間数が不足している中、前々日、前日の準備、代休などで授業をつぶせしていいのかという問題もある。
 まだ開催の可否について結論の出ていない学校も多いが、中止という判断に至る学校が多いのは止むを得ない。

 1日や2日くらい、いいではないという考え方もある。
 その考えに真っ向から反対するものではない。
 ただ、文化祭や体育祭にしても修学旅行にしても、準備に時間がかかる。大規模な行事であればあるほど事前準備、事前指導が欠かせない。
 事前準備・指導があって、当日があって、事後指導がある。この3点セットで行事は成り立っている。
 
 思い出作り。
 そう。生徒的にはそれでも構わない。

 だが、前後がなくて当日だけの学校行事は、あまり意味がない。

 私も教員時代、修学旅行の担当というのを経験したが、自分の中では出発当日までで修学旅行の9割は終わっていた。
 もちろん出発から帰着までて何かと気は抜けないのだが、高々3、4日のことだ。
 準備にかけた時間とエネルギー比べたら大したことはない。

 学校行事は当日よりも、その事前指導の過程にこそ教育的意義がある。
 その事前準備、指導の時間が十分取れないとあれば中止もやむを得ずということになる。

 この3か月、まともに授業ができなかった。だからそのために失われた知識や技術の補填を第一に考えるのは当然だ。しかし、知識や技術の補填は、この先の人生でいくらでもできる。
 その一方、若い今だから学べることがある。大人になってからでは手遅れということがある。
 
 「この大変な時期に、のんびり学校行事なんかやって」という親からのクレームがあるかもしれないが、そういう思考の人間を作らないためにも行事は必要なのだ。
 この数か月、先生方は何度年間計画を練り直したことだろう。今も続いているだろう。
 そんなさなかに言いにくいが、準備と意義とのバランスを考えつつ、少しでも行事を組み込んでもらたいと思うのである。