生徒募集について他校の成功事例を紹介して欲しい。学校の先生からよくあるリクエストだ。
 今日もこれから某私立学校に向かう。今回は職員研修ではなく小規模な勉強会ということだ。まあ、私なんぞで良ければ、どこへでも出かけてお話しますよ。

◆私は大衆食堂をめざしている
 最初にお断りしなきゃいけないのは、私は飲食業界に例えれば、ファミリーレストランか大衆食堂みたいな存在であるということだ。自分が好んで使っているのは大衆食堂の方。
 メニューだけはやたら多いよ。カレー、ラーメン・天ぷらそば、スパゲティ、かつ丼、お刺身定食。何でも出しちゃう。
 で、お味は?
 いや、それを求めるんだったら専門店に行ってくれ。

 世の中には、広告・広報・マーケティングや、入試制度、教育課程、授業方法、ICT教育等々数え上げたら切りがないが、教育や入試だけを取ってもさまざまなジャンルに専門家がいる。
 基本私はそれらの専門家をリスペクトしている。
 信用できないのは教育評論家。まあ自分もそのお仲間みたいなものだが、そうだな、そっちが1万円取るなら、こっちは千円で同じ料理出してやろうじゃないか。その意味で大衆食堂。

◆他校に学ぶ姿勢は好ましいが、手あたり次第では困る
 他校の成功事例に学ぶ。
 これは基本的な態度として好ましい。人間、謙虚さがなくてはいけない。学ぶ姿勢がなければいけない。学びについて教えるべき立場の人が、自ら学ぶ姿勢がなければ笑われる。
 中に片っ端から他校・他人の悪口を言う人がいるが、人間性を疑う。私が生徒だったら、こういう先生からものを教わりたくない。

 他校が間違ったことをしていると思うなら、黙ってやらせておいた方が自校は有利になるから、ここは沈黙が正解。
 学校が違っていても、同じ教育業界に身をおく同士、仲間みたいなものじゃないか。それを悪しざまに言うのは、天に唾する行為というんだよ。「バカが大勢いる?」。じゃあ、お前も結局は同類でバカなんだろう。

 というわけで、他校に学ぼうという姿勢は正しい。

◆学ぶ相手を選ばなければならない
 で、ここからが重要なんだが、学ぶといっても手あたり次第というのはダメなのだ。
 ベンチマークする相手を間違ってはいけない。学ぶ対象を正しく選ばなくてはいけない。
 というのは、ある学校がうまくやっているとして、それが自校に適合するかという問題があるからだ。

 学校を変えるというのは、さら地に家を新築するより、改築に近い。
 これまでの歴史を見ると、校名や場所や経営陣を総とっかえして、ほとんど新築近いリニューアルを実施した例もある。それならば、各地の住宅展示場を見て回るのもいいが、改築の場合、当てのない展示場めぐりは労多くして益は少ない。

 まずは改築の基本方針を定めるべきだ。今までのどこが不便で、それをどう改善したいのか。つまり、どういう学校に変えて行きたいのかということだ。
 それが定まった後、似たような環境、条件から出発し、似たような方向を目指して成功を収めている学校を見に行く。

 あの学校はここがいい、この学校はこれがいいと、方針も定めずただ模倣すると、結果として個性が失われる。そんな改革でいいのか。個性を際立たせるための改革ではないのか。

◆改革・改善の方向はどうやって探すか
 改革・改善の方向性をどう定めるか。ここを語り出すと相当長くなるので、思いっきり端折ると、答えは身近なところにある。言い換えると、今までやって来たこと、今やっていることの中にある。
 いや、だってそれが駄目だから、人気も出ないし生徒も集まらないんでしょう。

 と、思われるかもしれないが、どっこいそうでもない。
 おそらく美点に気づいていない。あるいは徹底の度合いが低い。
 本人普通にやっていることが、傍から見たら「それってスゴイ」ということがあるでしょう。「そこ、もう少し究めたらすごい事になるのに」というのも。
 学校や塾の先生方の日頃の生徒指導とおんなじだ。

 では、今から行って来ます。