先日、埼玉県内私立高校の令和2年度入学者の傾向について調査した。今回はその公立バージョンだ。
調べたのは主に「地元占有率」だ。
入学者がほぼ地元で固められている学校多いと思われるが、中にはかなり広範囲に広がっている学校もあるはずだ。
広範囲に広がっていそうなのは、県立浦和などトップレベルの進学校・伝統校、あるいは常盤(看護)のように全県でそこにしかない学科を擁する学校だ。また、立地(所在地)・交通アクセスも関係しそうだ。
では、実際はどうだったか。
私が興味を持ったいくつかの学校を紹介しよう。
◆「さいたま市」からが意外に多い川越女子
以前から見られた傾向だが、さいたま市内公立中学校出身者には川越女子を志望する生徒が意外に多い。
さいたま市の女子トップ層の選択は国立、都内上位私立、そして浦和一女だ。
県内公立にこだわるなら、共学だが大宮、場合によっては市立浦和あたりも視野に入ってくる。ただ、女子校狙いとなった場合、次の選択肢として浮上するのが川越女子だ。
交通は、大宮駅からだと埼京線・東武東上線利用で35分(乗り換え時間含む)、南浦和駅からだと武蔵野線・東武東上線利用で40分(同)。
学校は川越市駅を降りれば目の前だ(但し、正門までは学校の敷地をグルっと半周する感じで5分はかかりそう)。
決して近いとは言えないが、十分に通学可能範囲だ。
以上のように、地元西部が58.2%でもっとも多いが、南部19.6%に次いでさいたま市も18.2%とかなり多いことが分かる。
グラフにするとこんな感じ。
さいたま市18.2%ということは、40人学級なら1クラスあたり7人だから、少数派ではあるがそれほど珍しい存在ではない。
◆地元中心の男子校・川越
では次に、お隣の男子校・川越を見てみよう。
グラフにすると、こんな感じ。
こちらは、地元西部の割合がグンと増え、さいたま市は5.3%にとどまっている。川越女子のような「さいたま市→川越」という動きはあるにはあるが、それほど多くない。
さいたま市からの流入が少ないのはいいとしても、浦和や大宮への流出が多く、市内公立中の男子トップ層を確保できていないのではないかという心配がこの学校にはある。そのあたりは後で調べてよう。
◆西部より東部からが多い浦和一女
「さいたま市→川越」の流れがあるなら、その逆もあるのだろうか。
グラフにすると。
さいたま市が45.6%でもっとも多いが、南部に次いで東部が17.9%とかなりの割合を占めている。
いわゆる中学校のレベルの問題もあるが、「さいたま市→川越(西部)」はあっても、「川越(西部)→さいたま市」はあまりないようである。東部地区の女子トップ層かつ女子校狙いの生徒にとって、地区内に該当校がないという事情もありそうだ。
なお、私立調査の際にも触れたが、この統計においては、草加市・朝霞市・志木市・新座市・和光市などは南部教育事務所管内ということで南部扱いである。
◆全県からバランス良く集まる大宮
交通網や立地から見て、もっとも広範囲から集まりそうなのが大宮だ。
南北は高崎線と京浜東北線、東は宇都宮線と東武野田線、西は埼京線でカバーできる。
最寄りは「さいたま新都心駅」(徒歩10分)だが、「大宮駅」も徒歩圏内だ。
数字(割合)を見てみよう。
グラフにすると。
地元さいたま市の割合が多いのは当然だが37.3%にとどまっており、西部・東部もそれぞれ10%を超えている。
次に県立浦和を見てみるが、おそらくこのバランスの良さ?は県内上位校の中で随一だろう。
埼京線の川越・大宮間は約25分。川越を中心とした西部地区の男女トップ層がかなり流入している様子がうかがえる。
◆やはり全県から集まる県立浦和
県立トップ校だけに、全県から集まるであろう。
では数字(割合)を見てみよう。
グラフにすると。
大宮との違いは、さいたま市の割合がやや多いという点だけだろう。その分西部の割合がやや少ない。
地元(さいたま市)の占有率も高いが、他地区からの入学者も多いのが浦和・浦和一女・大宮に共通に見られる傾向だ。
◆半分がさいたま市の春日部
男子校をもう一つ。県東部地区のトップ校・春日部だ。
数字(割合)を見てみよう。
グラフにすると。
東部地区にありながら、さいたま市の割合がもっとも高い。次いで地元東部、南部と続き、北部は0.3%(人数では1人)で西部はゼロである。西部からの流れは大宮駅でストップしてしまうようだ。
最寄りは東武野田線(一説にはアーバンパークライン)の八木崎駅であるが、学校案内では徒歩1分とされている。男子高校生ならそんなもんだろう。八木崎駅がもうちょっと大きな駅であれば、学校は駅構内にあるといってもいいくらいな近さだ。しかも、県立とは思えない豪華な校舎。うらやましい学校だ。
なお、県外から12人(千葉7人、茨城5人)入っている。もう少し多いと思ったが意外に少ない。
◆県外比率高く、さいたま市からも多い不動岡
県東部の伝統校・不動岡はどうだろう。
数字(割合)を見てみよう。
グラフにすると。
地元東部が断トツ多いのは当然として、意外に多いのがさいたま市だ。
最寄りの東武伊勢崎線加須駅までは、大宮からなら宇都宮線で久喜乗り換え、岩槻からなら春日部乗り換えで、共に40分程度。加須駅から学校までは公称20分。
人数にして31人なのだが、どのあたりの中学校なのかいずれ聞いてみよう。
それと、この学校は県外からも多い。入学者全体の10.1%(人数で36人)が県外からで、群馬19人、茨城15人。県外人数の多さでは県で1位、割合では児玉13.9%、庄和10.5%に次いで3位である。
◆川口にあるのにさいたま市が多い川口北
個人的に縁の深い川口北は、所在地は川口市だが、さいたま市がもっとも多い。蕨も似たような傾向だ。
最寄りは武蔵野線「東浦和駅」からも分かるように、川口市のはずれ、さいたま市との市境にあるのでそうなる。
数字(割合)を見てみよう。
グラフにすると。
その差は僅かだが、さいたま市がもっとも多い。この学校は私のかつての勤務校であるが、新設以後急速に評価が高まった背景には、さいたま市からも通いやすいという地理的条件もあったように思う。
◆唯一の看護、常盤は全県から
全県で一校しかない看護科であるから、常盤には全県から集まるだろう。
数字(割合)を見てみよう。
グラフにすると。
募集人員80人と少ないが、予想通りほぼ全県から偏りなく集まっている。
5年一貫教育(看護科3年、専攻科2年)の学校である。埼玉大学の近くだが、もう少し通学に便利な場所に移してあげられたらいいのにと思う。
◆大宮光陵の芸術系も全県から
最後に芸術系だ。
大宮光陵を見てみよう。普通科との複合型だが、美術・音楽・書道のみの統計だ。
数字(割合)を見てみよう。
グラフにすると。
地元さいたま市の割合がもっとも多いが、他地区からも多く集まっている。
大宮のはずれにあり遠方からの通学者にとって決して便利とは言えないが、毎年東京芸大に複数合格を出しているような学校であるから、広範囲から生徒がやって来るのだろう。
芸術総合は所沢市にあり、芸術系(美術・音楽・映像芸術・舞台芸術)に特化した学校だが、こちらは地元西部が57.0%を占めている。南部の22.8%を加えると約80%が地元及び周辺であって、大宮光陵ほどの広がりはない。西武池袋線「小手指駅」からバス、さらにバス停から徒歩5分。すぐそばが早稲田大学所沢キャンパスなのだが、あちらはスクールバスがある。それに大学生だから車という手もある。
全県から通うにはちょっと厳しい立地だ。
以上。
これやってると、いつまでも続きそうなので、今日はここまでだ。
コメントを残す