今日は割と地味な企画で、専門高校の進路状況である。
 専門高校は職業教育が中心だから、進路は基本就職なんだろう。という見方で概ね正しいと思うが、最近は進学も多いという話も聞いている。そこで、そのあたりを数字で確かめてみようというわけである。

 進路に関するデータは、「学校の活性化・特色化方針」の中にある「進路状況」の数字を用いた。

 では始める。
 専門高校の中でも、歴史のある農業・工業・商業に関してだ。

◆深谷商業は就職者40%以下、浦和商業は大学進学22.5%
 商業系学科のみの高校は埼玉県内に8校ある。
 大正時代創立(岩槻商業、熊谷商業、深谷商業)
 昭和・戦前創立(浦和商業、大宮商業) 
 昭和・戦後創立(皆野、所沢商業、狭山経済)
 他に商業系学科を持つ学校としては、上尾、鴻巣、越谷総合技術、新座総合技術、鳩ヶ谷、鳩山、羽生実業、八潮南、市立川越がある。

 進路は就職が多数かと思いきや、令和2年3月卒業者(以下同じ)でみると、8校全体の就職者は857人で、卒業者に対する割合は51.4%だ。
 思ったほど多くない。
 就職 51.4%
 専門 27.1%
 大学 15.9%
 短大 4.0%
 その他1.7%

 就職者の割合が50%以下なのは深谷商業(39.0%)、狭山経済(44.0%)、熊谷商業(44.2%)の3校。就職者の割合がもっとも高いのは大宮商業(62.7%)。
 大学の割合が高いのは狭山経済(23.3%)、浦和商業(22.5%)、熊谷商業(18.6%)。
 進学の中では専門学校の割合が高いが、浦和商業だけは専門学校(13.9%)に対し大学(22.5%)と、進学に占める四年制大学の割合が高い。
 今回は詳しく調べていないが、大学の割合が20%以下である普通科校が20校以上あるはずだから、狭山経済、浦和商業、熊谷商業、それに深谷商業(15.1%)あたりの大学進学率はかなり高いと言える。
 ▼主な進学先
 深谷商業 中央(3)東洋(2)
 熊谷商業 中央(2)東洋(3)日大(2)
 浦和商業 中央(1)東洋(1)日大(1)
 
◆技術・資格生かしての就職が多い工業系
 工業系のみの高校は埼玉県内に9校ある。
 明治時代創立(川越工業)
 大正時代創立(大宮工業)
 昭和・戦前創立(川口工業)
 昭和・戦後創立(浦和工業、狭山工業、久喜工業、春日部工業、熊谷工業、三郷工業技術)
 他に工業系学科を持つ学校としては、越谷総合技術、児玉白楊、進修館、秩父農工科学、新座総合技術がある。

 就職者の割合は商業科よりも高く、9校全体では1351人(68.7%)だ。もっとも高いのは三郷工業技術(78.5%)、もっとも低いのは浦和工業(57.7%)。
 大学は全体では11.5%。もっとも高いのは大宮工業(16.0%)、次いで川越工業(14.3%)、春日部工業(13.7%)。

◆新座総合技術は大学含む進学が63.5%
 上記以外の職業系専門高校としては、
 熊谷農業(農業)
 杉戸農業(農業)
 児玉白楊(農業・工業)
 羽生実業(農業・商業)
 進修館(工業)+総合学科
 秩父農工科学(農業・工業・家政)
 越谷総合技術(工業・商業・家政)
 新座総合技術(工業・商業・家政)
 いずみ(生物・環境)
 などがある。

 就職者の割合が50%以下なのは、新座総合技術(28.3%)、越谷総合技術(40.2%)、いずみ(40.7%)、熊谷農業(45.8%)と進修館(42.4%)。
 進学の中心は専門学校だが、新座総合技術は大学が23.6%で、就職者(28.3%)と大して変わらない割合となっている。

 私のように昭和に生まれ育った人間は、専門高校(学科)イコール就職と考えがちだが、実際に調べてみると就職者の割合が半分以下である学校も多い。
 技術や資格を手に入れつつ大学等への進学をめざすというのが、これからの一つのスタイルなのかもしれない。

 実際、大学を受験するということになれば、教育課程がそのようになっていないから指定校推薦を利用することになり、選択肢は必ずしも多いとは言えない。
 大学をめざすなら普通科を選べばよかったのにと思うが、専門知識や技術を学んでいるうちに、もっと深く学びたいと思うようになったというケースもあるだろう。
 いずれにしても、専門高校への進学指導というのは難しいものである。

 そうそう、埼玉県教委から専門高校の体験入学日程のまとめ資料が出ている。
 専門高校体験入学実施予定一覧
 もう終わってしまったイベントも多いが、一応紹介しておこう。
 しかし、この資料の在りかは普通の人では見つからないよ。
 埼玉県教育委員会トップページの上の方のメニューに「学校教育」があって、そこから「高等学校教育」→「専門高校ガイド」と進むと、実施予定一覧にたどり着く。で、それは面倒だと思うからリンクを貼っておいた。

 ※関連記事(2020年9月1日付記事)
 「専門高校からの大学進学事情はどうなっているか(埼玉県公立の場合)」

 ※ついでながら
 9月27日、「オンライン彩の国進学フェアにおける入試ワンポイント解説の要旨」という記事を書いたが、そのときの動画が見られることが分かった。 
 この先どうなるかは聞いていないが、今ならココで実際の動画が見られるのでお知らせしておく。
 オンライン彩の国進学フェア~埼玉県公私立入試ワンポイントアドバイス~
 7時間に及ぶ長い動画だが、該当箇所は「3:15:15~3:30:15」あたり。