文部科学省は教科書のデジタル化をさらに進めようとしている模様。
 今年7月から12月にかけて「デジタル教科書の今後の在り方に関する検討会議」というものが7回にわたって開かれた。
 検討会議自体はこれで終わりではない。

 だが、10月に平井デジタル改革担当大臣が「小中学校の教科書は全面デジタル化すべき」との見解を示し、萩生田文部科学大臣にデジタル化推進を要請。これを受けて文科大臣は検討会議に対し、この件に関する議論を加速するよう指示した結果、今回とりあえず「授業時数の2分の1未満」という現行基準の見直しについて一定の方向が示されたわけである。
 検討会議の報告全文はコチラ(文部科学省サイト)
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 学習者用デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととする基準の見直しについて(2020年12月 デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議)

 現行基準でデジタル教科書の使用を授業時数の2分の1未満としているのは。視力の低下など児童生徒の健康面に配慮したからだ。
 しかし、授業中そんなに長時間教科書を見ているものなのか。
 むしろ、黒板や先生を見たり、ノートやプリントに字を書いたり、友達と相談したりしている時間の方が長いのではないか。
 視力低下と言うなら、ゲームをしたり動画を見たりしている時間を心配したほうがいい。

 私は教科書デジタル化により登下校の荷物が軽くなるから賛成だ。
 当面賛成理由はこの一点。

 タブレットなど端末はいずれ行き渡るだろう。
 その時になって、さあ次は教科書だ、というのではなく、それを見越して同時並行で進めたほうがいい。

 教員の側のデジタルスキルを心配する声もあって、それももっともだと思うが、スキルは使わなければ向上しない。

 紙をデジタル化しただけでは意味がないというのもその通りだが、いったん規制がとれて技術革新が進むと、既存の教科書の概念を変えるような新しいタイプの教科書も現れる。
 この進化のスピードは意外に早いのではないか。

 と、まあ、さまざまな心配事はあるわけだが、それらについては検討会議でも意見が出ている。
 お時間のある方はコチラをお読みいただこう。
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 これまでの会議における主な御意見

◆「紙、紙、紙」と連呼する新聞社
 話は変わるが、教科書のデジタル化に真っ向反対しているのが新聞社や雑誌社、いわゆる紙媒体のマスコミであるのが面白い。
 たとえば読売新聞はわざわざ社説で反対意見を述べている。
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 デジタル教科書 紙を基本に特性生かす工夫を(2020年11月14日) 
 デジタル教科書 紙との二者択一は誤っている(2020年12月23日)
 ここまではデジタル教科書反対。
 活字の学び 紙と電子ともに持ち味生かせ(2020年6月14日)
 これはデジタル教育反対。
 デジタル化推進 高齢者への目配りが不可欠だ(2020年11月11日)
 こちらは世の中のデジタル化反対。

 紙へのこだわり、紙への愛が感じられる。
 いや、紙への信仰かな。紙こそ神。

 私も紙の教育で育った「ヤギさん世代」(そんな言葉あったか?)だから、新聞社がメーメー騒ぐ気持ちも分かる。
 デジタル化によって紙が廃れれば、ただでさえ部数が減っているところに、さらに大きなダメージを受ける形になる。

 でも、どんなに騒いでも時代というのは元には戻らないものだ。
 紙の新聞は、一部愛好家(マニア)のための媒体としては残るだろう。
 また、伝統技術として保存する価値もあるだろう。
 ただし、このままではマス(大衆)のためのメディアではなくなる。

 読者の皆さんご存知のとおり、私は読売新聞系列の会社や埼玉新聞社と取引があり、原稿を書かせてもらっているわけだ。
 だから新聞社が紙への愛着が強すぎるあまり、時代に取り残されてしまうようなことがあれば商売に響くのである。
 そういう立場で書いていることを一応、お断わりしておこう。