埼玉県公立高校入試は明日から志願先変更。そこで本日は、前年度の状況を簡単に振り返ってみる。
 前年度(令和2年度)全日制普通科を例にとると、110の学校・コースのうち、106の学科・コースで動きがあった。
 当初志願者と変更後志願者の比較増減がゼロであったのは4校に過ぎない。
 この4校にしても、増加数と減少数がイコールで、統計上増減ゼロとなっている可能性もあるわけで、そう考えれば、ほとんどすべての学校で変更はあったと考えていい。

◆志願先変更で増加しそうな学校 
 前年度の場合、10人以上の増加がみられた学校が18校あった。
 18校中14校は当初出願の段階で定員割れ状態にあった学校だ。
 残り4校は、定員割れ状態ではないが増加した。
 上尾  +24人 当初倍率1.01
 越谷北 +14人 当初倍率1.07
 所沢北 +10人 当初倍率1.11
 朝霞西 +10人 当初倍率1.04
 学校のレベルや人気、過去のデータから見て、予想外に倍率が低く出ていた学校ということだろう。

 今年度の特徴は、川口北(1.00倍)、熊谷(1.00倍)、坂戸(0.99倍)、松山(0.90倍)、松山女子(0.96倍)といった歴史もあり、学力レベルも高く、部活も盛んで、それなりの進学実績を残している学校が、定員割れかそれに近い状態にあることだ。
 これらの学校の定員を余らしておく手はない。仮に10人、20人増加したとしても倍率は1.10倍以下である。受験生側からすれば狙い目だ。

 前年度、5人以上の増加がみられた学校は8校あった。
 8校中3校は当初出願の段階で定員割れ状態にあった学校だ。
 残り5校は、定員割れではないが増加した。
 川口   +8 当初倍率1.14
 市立川越 +7 当初倍率1.15
 坂戸西  +6 当初倍率1.04
 所沢中央 +6 当初倍率1.03
 春日部東 +5 当初倍率1.13
 全県的に見た場合、決して難関校とか超進学校というわけではないが、部活も盛んで、各地域において堅実な人気を保っている学校だ。こうした学校の倍率が低めに出ている場合は、ある程度増加する可能性がある。

 今年度の場合でみると、入間向陽(1.03倍)、浦和北(1.03倍)、大宮光陵(1.03倍)、大宮南(0.97倍)、草加(0.99倍)、所沢西(1.05倍)あたりがやや低めに出ていると思われるので、増加の可能性がある。

◆志願先変更で減少しそうな学校
 前年度の場合、10人以上減少した学校が9校あった。
 浦和  -13 当初倍率1.53
 大宮北 -21 当初倍率1.41
 越ヶ谷 -14 当初倍率1.38
 大宮  -15 当初倍率1.36
 草加南 -22 当初倍率1.32
 庄和  -22 当初倍率1.23
 白岡  -10 当初倍率1.20
 北本  -12 当初倍率1.16
 志木  -15 当初倍率1.11
 予想外の倍率を見て安全策に切り替えたのは共通だが、浦和・大宮北・越ヶ谷・大宮に関してはある程度の高倍率は事前に予想できたことで、その予想を超えたというところだろう。
 それ以外の5校は、むしろ低倍率を予想したが、意外に倍率が高く敬遠されたのではないか。

 前年度と比較すると、今年度は倍率1.40倍超の高倍率校(コース含)が6校から12校と2倍に増えている。
 当初出願段階の倍率トップ5を並べてみると、次のようになる。
 今年度      前年度
 市立浦和1.99  市立浦和1.59  
 川口市立1.81  浦和西 1.56
 川越南 1.77  浦和  1.53
 市立川越1.64  蕨   1.53
 大宮  1.57  川越  1.46
 こうしてみると、今年度の市立浦和、川口市立、川越南あたりがいかに高倍率かが分かる。

 前年度の場合、当初出願倍率トップ5の学校の志願先変更後はどうなったかというと、市立浦和(1.59→1.58)、浦和西(1.56→1.55)、浦和(1.53→1.49)、蕨(1.53→1.51)、川越(1.46→1.46)と、それほど大きく動いていない。
 上位難関校の1.40~1.50倍程度はあらかじめ予想された倍率であるから、そこでは大きな変動(減少)は起こらないというのが前年度の経験である。

 では、それを踏まえて、改めて今年度の当初出願倍率上位校を見てみよう。
 まず上位10校。
 01市立浦和 1.99
 02川口市立 1.81
 03川越南  1.77
 04市立川越 1.64
 05大宮   1.55
 06川口市立・スポーツ科学 1.48
 07浦和一女 1.45
 08日高・情報コース 1.43
 09浦和   1.42
 09所沢北  1.42

 浦和浦和一女大宮市立浦和など上位難関校志願者は元々ある程度の高倍率は覚悟の上と思われるので、若干は減少するが、倍率を大きく下げるほどの変動はみられないだろう。ただ、市立浦和の1.99倍はちょっと高すぎるので、ここは比較的大きな変動があるかもしれない。
 ちょっと高すぎるという点では川口市立川越南市立川越あたりも同様で、減少に向かうと予想される。
 川口市立を回避した場合、その志願者が川口北に向かうかどうかだが、それでは安全策をとることにならない。将来は分からないが現時点では川口北のランクが上だ。いかに定員スレスレとは言え、川口市立から川口北への変更はリスクが大きい。川口北が増加するとすれば、市立浦和や浦和西、蕨からの変更があるかどうかだろう。元々川口と言いながら、さいたま市の生徒の方が多い学校だ。
 
 次に11位から20位。
 11浦和西  1.40(1.56)
 12南稜   1.39(1.19)
 13越ヶ谷  1.38(1.38)
 14川越   1.36(1.46)
 15大宮北  1.35(1.41)
 16蕨    1.35(1.52)
 17越谷北  1.33(1.07)
 17不動岡  1.33(1.23)
 19越谷南  1.32(1.32)
 20川越女子 1.30(1.39)

 ほぼ妥当な、つまり十分予想できる範囲内の倍率であるから、これらの学校が高倍率を理由に回避される可能性は低い。強いて言えば、南稜越谷南あたりがやや高めなので減少に向かうかもしれない。

 最後に21位から30位。
 21志木   1.29(1.11)
 22春日部  1.28(1.34)
 23本庄   1.27(1.15)
 24鳩ヶ谷  1.27(1.28)
 25朝霞西  1.25(1.03)
 26所沢中央 1.25(1.03)
 27伊奈学園 1.24(1.12)
 28春日部女子1.24(0.99)
 29上尾   1.23(1.01)
 30朝霞   1.23(1.30)

 カッコ内は前年同期の倍率である。春日部は別格だが、これらの学校の中には、前年の低倍率の反動で志願者が増えた学校もあるとみられる。朝霞西所沢中央上尾あたりにその兆候がみられるので減少に向かうかもしれない。春日部女子志木は募集人員減も倍率を押し上げている要因の一つだ。
 
◆志願先変更は是か非か
 倍率をみて志願先を変更していいかどうかだが、個人的には、倍率を恐れてランクをさげることには否定的である。

 もし受験生や保護者から相談を受けたら、初志貫徹を勧めるだろう。仮に公立が残念な結果に終わっても、おそらく私立の合格を確保しているだろうから、それでいいではないか。学費がネックにはなるが、面倒見の良さは私立の方が上を行っていると思うよ。

 だがしかし、制度としてある以上、これを利用することに何ら問題はない。
 どうしても公立というのは経済的な問題もあるかもしれないが、通学のこともある。
 埼玉県には63の市町村があり、そのうち41市町に公立全日制高校がある。これに対し、私立高校があるのは21市町だ。しかも、さいたま市に10校、川越市に7校と所在地に偏りがある。そうなると、通学距離・時間・方法などから私立を選びにくいという場合も出てくる。
 
 受験生本人のことをよく知る中学校や塾の先生のアドバイスを受けながら、それぞれの事情や考え方に基づいて行動されるがよろしかろう。