生命保険を解約した。もっと早くすべきだったが、ズルズルと保険料を払い続けてしまった。
 今にして思えば無駄に保険料を払ってしまったな、ということなのだが、むろんこれは個人的感想というやつである。
 家庭にはそれぞれ事情がある。個人の人生観、価値観もさまざまだ。
 だから、あくまでも私の場合。

 最初のタイミングは子供が大学を卒業して社会人になったとき。
 次のタイミングは子供が結婚して家庭を持ったとき。
 最後のタイミングは年金受給資格が発生したとき。
 そのいずれのタイミングも逃してしまったことを今になって悔いている。

 生命保険というのは万が一に備えるものだ。
 つまり私が突然死んだとしても、当面家族が路頭に迷うようなことがないよう、それに備える。
 そう考えれば、明日からの生活に困る者がいなくなった時点で生命保険の役割は終了していたのだ。
 むろん、その後は死亡保障よりも医療保障に重きを置いたものに転換するというようなことはしてきたわけだが、後半は保険会社の社員の生活を保障するために払ってきたようなものだ。
 もっと真剣に考えておくべきだった。

 保険会社の社員は、「解約するぞ」と言ったら、「ああ、そうですか」とあっさり引き下がった。
 そりゃあそうだろう。
 もう十分儲けたのだから。
 その割には、長い間契約を続けてくれて有難うございますの一言さえ無かったな。
 そんなものだ。

 さて、そんな私の個人的体験はいいとして、高等学校学習指導要領の話である。

◆高校家庭科で金融教育
 新しい学習指導要領では、高校の家庭科で金融教育が始まるらしい。
 高等学校学習指導要領解説「家庭編」に次のように書かれている。
 
「ア 家計の構造や生活における経済と社会との関わり
 家計管理について理解すること。家計の構造や生活における経済と社会との関わりについては、可処分所得や非消費支出の分析など具体的な事例を通して、家計の構造を理解するとともに、家庭経済と国民経済との関わりなど経済循環における家計の位置付けとその役割の重要性について理解できるようにする。
家計管理については、 収支バランスの重要性とともに、リスク管理も踏まえた家計管理の基本について理解できるようにする。その際、生涯を見通した経済計画を立てるには、教育資金、住宅取得、老後の備えの他にも、事故や病気、失業などリスクへの対応が必要であることを取り上げ、預貯金、民間保険、株式、債券、投資信託等の基本的な金融商品の特徴(メリット、デメリット)、資産形成の視点にも触れるようにする。

 家庭科というのは調理や被服の勉強だけじゃない。
 ということは前々から分かっていたことで、消費者という立場からの金融がらみの教育はこれまでも行われていた。

 契約書ちゃんと読め。
 解約もできるんだぞ。
 悪徳消費者金融に騙されるな。
 リボ払いは地獄に落ちるぞ。
 といった内容は、個人を消費者と見立てての話だ。
 しかし、今度はそうじゃない。
 「消費」にとどまらず「投資」も含まれるということだ。

◆誰が教えるの?
 株式、債券、投資信託等の基本的な金融商品の特徴
 資産形成

 はて、これを誰が教えるのか。
 家庭の先生にファイナンシャルプランナーの資格取れってか。

 しかし、何か怪しげだね。
 裏に政治や行政、それに業界の動きがあるような気がしてならない。
 国の社会保障はもう限界だから、自己責任で生きられる人間にしておけ。
 投資に興味を持たせて、将来証券会社や銀行や生保のいい顧客になるように教育しておけ。
 まさか。

 言葉は悪いが、投資だの資産形成だのといった話は、われわれのような貧乏人には無縁の話だ。
 「いや、そういう方こそ、コツコツと」
 というのは、金融商品セールスの決まり文句。
 それに乗せられて大損したやつはいくらでも見てきた。

 お金儲けなんぞ考えず、どうせコツコツやるなら貯めたほうがましだと思うが、さて、先生方はどう教えるのだろう。